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地方衛生研究所における業務体制実態調査 ‐その1‐

平成17年9月現在、地方衛生研究所全国協議会には76機関の地方衛生研究所(地研)が加盟しており、それぞれの地域で保健衛生行政のための科学的・技術的中核機関として活動しています。本実態調査は平成16年度厚生労働科学研究「地方衛生研究所のあり方および機能強化に関する研究」の分担研究(分担研究者:織田 肇 大阪府立公衆衛生研究所長)として、地研の活動内容を網羅的に調査したものです。
 調査結果の詳細は別途作成の報告書冊子に記載し、関係機関に配布しています。また、当所のホームページの厚生科学特別事業報告書(地方衛生研究所における業務体制実態調査)にも掲載していますので、御参照下さい。今回本紙では、2回に分けて調査結果の概要を報告します。

調査方法

平成16年11月12日に当時の地方衛生研究所全国協議会加盟の全ての地研75機関に対し、アンケート調査を電子メールにて依頼しました。アンケートの内容は、地研の組織、人員、予算、施設・設備、実施業務概要、調査研究・試験検査実施など計17項目約1,800の設問で構成しています。収集後回答の不明な点及び不備な点は、個々に問い合わせ、確認と修正を行いました。調査結果の集計は、地研を所属自治体別に都道府県47カ所、指定都市12カ所、中核市等16カ所に分類し、件数、範囲、算術平均値などをとり各設問について比較検討を行いました。なお、本調査は、横浜市、富山県、奈良県、堺市、広島市の地研との共同で実施しました。

調査結果

● 組 織

設置形態は、衛生単独型が21機関で、衛生型と環境型の合併型が54機関で72%を占めました。

● 人 員

衛生系の専門職常勤職員の平均は、都道府県31.0人、指定都市32.5人、中核市等11.5人となっており、75地研の衛生系常勤職の総数は、2,033人でした。

職種は、都道府県では研究職が多く、指定都市、中核市等では行政職が多くなっていました。年齢構成は40代と50代で約70%を占めていました。また、衛生系常勤職員の21%が博士号を取得していました。

人事異動の相手先で最も多い機関は保健所等で、63地研(84%)が交流を行っていました。1年当りの人事異動率は中核市等が11.9%と最も高く、次いで都道府県8.7%、指定都市7.8%でした。

● 予 算

予算については人件費が所の決算外となっている地研や、按分による衛生関係予算の算出が困難な合併型の地研もあるなど、仕組みが自治体によって異なっていました。

● 施設・設備

一人当り床面積は、全地研平均で94m2で、都道府県が最も広く、指定都市、中核市等の順でしたが大きな差はありませんでした。築後経過年数では、30〜40年が中心でした。設備関連では、最も保有率が高い設備は高度実験安全施設(P3)で、都道府県で91%、指定都市で92%、中核市等で50%、全地研では83%が保有していました。耐震免震構造は35%の地研が対応していました。

● 業務全般

主要4業務の割合は、全地研では調査研究19.7%、試験検査64.7%、研修指導7.1%、情報の収集・解析・提供8.5%でした。都道府県では調査研究と試験検査の割合が23.6%:58.7%で、調査研究の割合が全地研より高く、指定都市では18.4%:65.0%、中核市等では9.3%:82.2%と試験検査の割合が高くなっていました。

試験検査業務の内容は、細菌感染症、ウイルス感染症、食品残留農薬、食品微生物、感染症発生動向調査、食品添加物、家庭用品、食品汚染物質、原虫が多く、全地研の8割以上が行っていました。また、調査研究業務内容もこれとほぼ同じでした。

機関評価制度を設けている地研は都道府県で17カ所(36.2%)、中核市等で1カ所でした。

● 調査研究

平成13〜15年度における1地研当りの論文発表数は、都道府県、指定都市、中核市等の順に、それぞれ64.0、58.4、8.0で、衛生系常勤職員一人1年当りにすると、0.69、0.60、0.23でした。口頭発表数はそれぞれ69.4、56.8、7.7で、衛生系常勤職員一人1年当りでは0.74、0.58、0.22でした。(表1)


表1 論文発表及び口頭発表(平成13年〜15年度)
 表1 論文発表及び口頭発表

研究評価会議または委員会等を設置している地研は、全地研で47地研(62.7%)であり、都道府県では42地研(89.4%)、指定都市では5地研(41.7%)、中核市等では設置している地研はありませんでした。

倫理審査委員会の設置は、都道府県9地研(19.1%)、指定都市1地研(8.3%)の計10地研(13.3%)でした。

平成13〜15年度における1地研当りの総研究テーマ数は平均48.2で、都道府県、指定都市、中核市等の順に60.3、51.7、9.9で、衛生系常勤職員一人1年当りでは、それぞれ0.65、0.53、0.29でした。

● 試験検査

微生物分野と理化学分野の試験検査実施状況をみると、検査対応率の高い順に、三類感染症(全地研で対応)、細菌性食中毒(71項目中全地研平均で70.3項目対応可能)、二類感染症(6項目中5.4項目)、次いで水質基準項目(50項目中38.5項目)、ウイルス性食中毒(15項目中11.3項目)、五類感染症(42項目中29.4項目)でした。微生物分野では検査対応可能40%以下が11項目群中3項目群、理化学分野では18項目群中7項目群と全般的に微生物分野の方が対応率がやや高く、また、自治体間の対応率のバラツキも微生物分野の方が少ない状況でした。

検査できない」理由は、微生物分野では、「検査技術を持っているものがいない」が32%で最も多く、次が「検査の必要(需要)がない」の17%であるのに対し、理化学分野では「検査の必要(需要)がない」が28%で最も多く、次いで「標準品を保有していない」の20%でした。

薬師寺 積、織田 肇
ロゴマーク 公衛研ニュース第29号(2) 編集:公衛研ニュース編集委員会