抗菌グッズのブームの中で

- その安全性を考える -

菌グッズが大はやりです。特に病原性大腸菌O-157が猛威をふるった1996年夏からは、その種類も数も一段と増加しています。抗菌という言葉は、菌を制御するということで、殺菌、除菌など全ての意味を含めて使われているようです。ここでいう抗菌グッズとは、薬事法に規定する医薬品、医薬部外品、化粧品および食品衛生法に規定する食品や添加物を除いた商品類を指します。メ−カ−は、抗菌グッズの有用性を宣伝して商品の販売を進めていますが、国民生活センタ−では、「抗菌加工が不必要な製品や、抗菌効果がない製品もある。」と抗菌グッズへの過信を戒めています。

 一方、抗菌加工剤の種類は多く、医薬品、医療用具、化粧品、農薬などに使用されている抗菌剤も転用されており、これらの抗菌剤により皮膚かぶれなどの健康被害が起った事例はたくさんあります。ところが、抗菌グッズに関しては安全性についての資料や健康被害の報告は少なく、表示方法や安全性に関しての基準もほとんどないのが現状です。

 そこで当研究所では、平成3年度から6年間にわたってどのような抗菌グッズが販売されているか市場調査をしてきました。また、使用されている抗菌加工剤を薬剤調査資料などと照らしあわせて調べました。調査した製品の総数1,113件のうち、ラベルに抗菌加工剤名を表示してあるものは化学製品を中心として2割程度で、加工剤や加工方法及びブランド名から推測したものを含めても、高々4割弱の抗菌加工剤名しかわからず、大半は不明という結果になりました。このことから、消費者は抗菌グッズに使用されている抗菌加工剤をほとんど知らされていないことがわかります。今後、表示基準について見直しの必要があると思われます。

 次に、この市場調査結果や毒性試験および毒性情報などから安全性に問題のある抗菌加工剤を選んで、分析法を開発して市販製品の分析調査を行なってきましたが、その結果から、使用濃度や使用方法に問題のある場合はメ−カ−に使用中止を要請するなど、健康被害の未然防止を図ってきました。

 抗菌グッズに関して、使用抗菌加工剤だけでなく、もう一つの視点から安全性を考えなければなりません。それは、細菌には病原性を有するものだけでなく、人体に必要な常在菌も存在すると言う事実です。健康な皮膚にはそれらがバランスを保ちながら存在しています。したがって、必要な細菌まで殺してしまうと病原菌がはびこり、体に悪影響を与えることにつながります。幸い、これまで、抗菌グッズによって細菌バランスが崩れたり、耐性菌ができて健康被害に至ったという明らかな事例は見当りませんが、医薬品や化粧品中の使用抗菌剤によって、皮膚の常在菌のバランスが崩れて悪性のかび類が皮膚にはびこったという症例報告もあります。

 抗菌グッズの安全性を考えていく上で、薬剤による皮膚障害や呼吸器系障害は生じないか、皮膚常在菌叢が壊されないか、耐性菌が生じることはないかなどについて検討していく必要があります。特に皮膚のバリアが完成していない乳幼児、皮膚感受性が高くバリアが壊されやすいアトピー患者、皮膚バリア機能や化学物質代謝機能が低下している高齢者のための製品には、厳密なチェックが必要と思われます。

労働衛生部 中島 晴信