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大阪府の感染症発生動向調査事業

感染症発生動向調査事業は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」、いわゆる感染症法に基づき、感染症患者の発生や病原体検出の情報を収集・解析し、公開することを目的とした事業です。この事業の中で、各都道府県は感染症情報センターを設置することになっていますが、大阪府の情報センターはこれまで健康福祉部健康づくり感染症課に設置され、公衆衛生研究所は感染症情報の解析機関と位置づけられていました。
 しかし近年感染症に関する問題はバイオテロも含めて多様化しており、SARS、高病原性鳥インフルエンザなどの新興再興感染症の問題も次々とおこるなど、感染症情報センターの機能充実が求められるようになってきました。そこで本年4月より、当研究所に大阪府感染症情報センターを設置する事になりました。
 感染症情報センターの主な業務は地域の医療機関から保健所を通じて報告された情報を収集し、中央感染症情報センター(厚生労働省・国立感染症研究所感染症情報センター)に報告するとともに、全国情報と併せて解析し、関係機関や府民に提供・公開することです。

1.患者数の発生動向調査

感染症発生動向調査において医師の届出が必要な疾患は感染症法によって定められており、その疾患自体の重篤性や公衆衛生上の問題の大きさなどにより一類から五類に類型化されています(表1)。一類から四類までは患者を診断した医師が全て届け出る全数届出が義務付けられていますが、五類の疾患には全数届出のものと、定点として定められた医療機関が発生数を届け出る疾患があります。これらの患者情報は保健所を通じてオンラインで登録されます。情報センターではこの情報を大阪府内を11ブロックに分けた(図1)データとして蓄積し、増減にも注目した解析を行っています。またこの情報は毎週、大阪府、大阪市、堺市、東大阪市、高槻市が協力して開催している感染症発生動向調査解析小委員会で検討し、注目すべき感染症についてのトピックスを作成しています。
 異なった自治体の情報を共同で解析するこのシステムは、大阪府と大阪市が協力する形で古くから行われており、その後堺市、東大阪市、高槻市が政令市および中核市となった後も全市の協力のもとに行われています。全国的にみてもこのような形で都道府県と政令市が協力して感染症について解析を行い、情報を緊密に交換しているところはほとんど無いとのことですが、地域の感染症の動向を把握する上で非常に有益なことです。また、こういった協力体制は今後新興感染症の発生など有事の際の迅速な対応にもつながると思われます。この委員会で解析された内容は、週報としてただちに府内の定点医療機関や保健所、市町村に還元するとともに、当研究所のホームページに掲載
http://www.iph.pref.osaka.jp/infection/index.html)するなどの方法で府民に情報を提供しています。

図1
図1 大阪府感染症発生動向調査ブロック分け

2.病原体情報

患者情報と並んで感染症情報としては感染症の原因となる病原体の情報も非常に重要であり、発生動向調査事業の中には病原体サーベイランス(監視)事業も含まれています。一部の定点医療機関は病原体定点も兼ねており、五類定点報告疾患患者から得られた検体について、当研究所感染症部で、病原体検索がなされています。このサーベイランスによって得られた病原体情報や、食中毒や感染症の集団発生などの事例から検出された病原体の情報は、患者情報と同様にオンラインで国立感染症研究所に報告され、全国情報として取りまとめられています。
 平常時から病原体サーベイランスを行うことは、疾患の流行の予測につながり、病原体の変異や新たな病原体の出現といった問題に早期に対処するためにも必要です。たとえばこのサーベイランスによって得られた冬季のインフルエンザウイルスの情報は国立感染症研究所を通じてWHOに送られ、次シーズンのワクチン推奨株を決定するためのデータとなっています。

3.より充実した大阪府感染症情報センターへ

新型インフルエンザなど今後出現が予測される新たな感染症やバイオテロなどについては、正しい情報が得られなければ不安を増大させ、社会に混乱を引き起こすことにもつながります。こういった緊急時にも対応した感染症情報の必要性は今後さらに高まることが予想されます。感染症情報センターが当研究所に設置されたことに伴い、今まで別々に収集されていた患者情報と、病原体情報を一元化することができるようになりました。このことを生かして、より質の高い有益でかつ迅速な情報提供を行っていきたいと思いますので今後ともご協力をお願いいたします。

表1 感染症法に基づく届出疾患
表1
感染症部ウイルス課 宮川 広実
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