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HIV/エイズの現状

 昨年11月、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、2007年の世界における生存HIV感染者の推計総数を、2006年の3,950万人から3,220万人に下方修正しました。これは感染者数が減少したためではなく、データ集計方法の改善・見直しにより、膨大な数の感染者を抱える南部アフリカやインドなどの推定感染者数が大幅に修正されたためです。HIV感染者は、南部アフリカやアジア諸国を中心に漸増を続けているのが現状てす。しかしその一方で、年間の新規感染者数は300万人を越えていた1990年代後半をピークに減少し、2007年は250万人程度と推定されています。世界的なHIV感染拡大のスピードがようやく緩みつつあるのかもしれません。

1.日本では増加しています

 先進国の中では“唯一HIV感染者が増加している国”と言われて久しい日本ですが、イギリスなど西ヨーロッパの一部の国を除き、主な先進国では新規感染者数が横ばいもしくは減少傾向にある中で、依然としてHIV感染者、エイズ患者ともに増加の一途をたどっています(図1)。エイズ動向調査委員会の報告では、2006年の新規HIV感染者・エイズ患者数はそれぞれ952人および406人で、そのうちの80%以上を日本人男性が占めており、約80%が性的接触による感染です。

2.大阪でも増加しています

 大阪府におけるHIV感染者数は、男性同性愛者を中心に急増しており、2006年の新規HIV感染者数は128人で東京に次ぐ第2位となっています(図2)。一方、新規エイズ患者数、つまりエイズを発症して初めて感染していることが判明したケースは24例で、感染者全体の15.8%にすぎません。都道府県によってはエイズ患者の報告数が全体の50%を越えるところもあり、全国平均でも約30%であるのに対し、大阪の新規報告数に占めるエイズ患者の割合は全国で最も低い値となっています。これは、大阪府、大阪市、NPOなどが協力して取り組んできた利用者の利便性を考慮したHIV検査体制づくりが、感染者の早期受検へとつながった結果であると考えています。感染を早期に発見できれば、早期治療・エイズ発症予防が可能になり、また知らない間に他人にうつしてしまうことも防げます。発症予防、感染拡大の防止は医療費の削減にもつながることが期待されます。当所では、抗体検査のみでは診断できない感染初期例を見逃さないよう、HIV確認検査に抗原検査や核酸増幅検査(NAT)を導入し、感染者の早期発見に努めています。
 しかし残念なことに、こういった努力も未だ感染の広がりをくい止めるまでには至っていません。当所のHIV確認検査において2006年に9例、2007年に5例の感染初期例が見つかっており、新規の感染拡大が継続している状況が示されました。さらなる予防・啓発活動の充実が求められています。

図1図1 日本におけるHIV感染者およびエイズ患者報告数の推移
図2図2 大阪府におけるHIV感染者およびエイズ患者報告数の推移

3.献血におけるHIV陽性率も増加しています

 献血件数自体が年々減少傾向にある中で、献血で見つかるHIV陽性者の割合は2005年を除き毎年増加が続いています。日本赤十字社の調べで、2007年に献血された血液の中でHIV陽性であったものが102件と初めて100件を超え、10万件あたりの陽性数も2.065件とこれも初の2件台となったことがわかりました(図3)。感染者数の増加に加えて、検査目的の献血が増えていることが原因と考えられています。また、陽性数の25%にあたる26件が大阪府内で献血されたことも明らかになり(東京都は17件)、大阪におけるHIV検査体制のさらなる充実が急務となっています。
 さらに注目すべきは、陽性102件のうち6件が、抗体検査では陰性でNATでのみHIVの存在が確認された感染初期のケースであったことです。献血された血液の検査にNATが導入されて以来、毎年1〜3件程度の陽性がNATにより見つかっていましたが、2007年に6件という急激な増加が認められたことから、今後さらに多くの感染初期の人が献血に訪れる可能性が憂慮されます。NATは非常に高感度ですが、ウインドウ期(感染してから検査で検出されるまでの期間)にごくわずかのウイルスが検査をすり抜けてしまう可能性はゼロではありません。輸血による感染を防止するため、日赤は「献血を検査に利用しないように」と呼びかけています。我々としても、保健所など公的検査所での無料・匿名HIV検査(http://www.pref.osaka.jp/chiiki/shippei/tokutei/aids/)を、より広く府民にアピールする必要性を強く感じているところです。

図3
 図3 献血におけるHIV陽性件数の年次推移
感染症部ウイルス課 森 治代

核酸増幅検査(NAT; Nucleic acid Amplification Test)

 遺伝子の一部を10万倍以上に増幅して、その存在の有無を調べる検査法。HIVに感染すると、体内でまずHIVが増殖し、その後HIVに対する抗体が作られるが、NATではHIVそのものを検出するため、抗体検査に比べ感染を2週間ほど早く知ることができる。