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日常生活におけるホルムアルデヒド曝露とアレルギー疾患との関連

先進諸国においてアレルギー疾患の増加傾向が指摘されています。日本のアレルギー疾患患者数は、厚労省による2005年の推計で、喘息109万人、アトピー性皮膚炎38万人、アレルギー性鼻炎45万人であり、その対策は公衆衛生上重要な課題となっています。アレルギー疾患発症に遺伝的要因が重要であることは疑う余地がありませんが、遺伝的要因とともに環境要因が強く関与している可能性があります。環境要因としてこれまで、幼児期での感染性疾患の減少、喫煙曝露、屋内の湿気やカビなどが調べられてきましたが、アレルギー疾患の病因はまだ十分に解明されてはいません。今回我々は、これまで室内環境汚染物質として注目されてきたホルムアルデヒド(FA)を取り上げ、日常生活におけるFA低濃度曝露がアレルギー疾患の有病率と関連しているかどうかを調査したので紹介します。

1.調査方法

 私たちは、大阪母子保健研究(コホート研究)に参加した妊婦998人(平均30歳)のベースラインデータを用いて、FA低濃度曝露とアレルギー疾患の関連を横断研究の手法により検討しました。収集した情報は、
 1)24時間平均FA曝露濃度(個人サンプラーにより測定)
 2)生活習慣・生活環境、既往歴など(自記式質問票により収集)
 3)寝具のダニ抗原量(半定量的測定)
です。結果指標(喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎)については、「過去1年間に治療歴がある」と質問票に回答した場合を「現在、疾患あり」としました。FA濃度は4レベル(30、60、90パーセンタイル値:<18、18-27、28-46、≧47 ppb)および2レベル(90パーセンタイル値:≦46、≧47 ppb)に区分しました。ロジスティックモデルにより、年齢、妊娠週数、寝具ダニ抗原量など多数の交絡要因を調整して、アレルギー疾患に対するFA曝露のオッズ比(OR)および95%信頼区間(95%CI)を算出しました。

2.調査結果

 対象集団におけるアレルギー疾患の有病率は、喘息が2.1%、アトピー性皮膚炎が5.7%、アレルギー性鼻炎が14.0%であり、FA曝露濃度は、中央値が24ppb、最大値が131ppbでした。日本におけるFA室内濃度指針値は80ppbで、13のサンプル(1.3%)が指針値を超えていました。対象者の約2/3は、測定した24時間中20時間以上在宅でしたので、FA曝露濃度には自宅の室内空気の寄与が大きいと考えられます。
 表1はFA濃度とアレルギー疾患との関連を示しています。FA濃度4レベルでの比較において、アトピー性皮膚炎有病率との正の関連が示唆されました(trend p = 0.08)。FA濃度2レベル間の比較において、高レベルではアトピー性皮膚炎の高有病率と有意な関連を示しました(調整OR = 2.25; 95%CI, 1.01-5.01)。
 一方、FA濃度と喘息およびアレルギー性鼻炎有病率の間には明らかな関連を認めませんでした。以上、「日本人妊婦において、FA曝露とアトピー性皮膚炎有病率に正の関連あり」という結果を得ました。疫学手法によりFA曝露とアトピー性皮膚炎有病率の関連を報告した研究は初めてであり、アレルギー疾患のリスク要因を探索するうえで、今後の新たな研究につながると考えられます。

表1 ホルムアルデヒド(FA)曝露とアレルギー疾患の関係表1

3.今後の課題

 今回の調査対象集団は全員妊婦であり、得られた結果の一般化には慎重な解釈が必要です。また、調査デザインは横断研究なので、原因と結果の逆転は否定できず、今後さらに、前向きコホート研究の結果が必要となります。

生活環境部生活衛生課 松永 一朗