HOMEページ公衛研ニュース > カビ毒「アフラトキシン」

カビ毒「アフラトキシン」

昨年の9月、非食用事故米が食用に転売されていた事件が大きく報道されました。その中で輸入米が非食用となった原因のひとつに「アフラトキシン」の検出がありました。カビが作るアフラトキシンとは、いったいどういうものでしょうか。

1.アフラトキシンの発見

1960年、イギリスのイングランド地方で春から夏にかけて10万羽以上の七面鳥雛が次々と斃死する事件が起こりました。当時、原因がわからなかったため、“七面鳥X病”と呼ばれましたが、その後の研究で、ブラジル産ピーナッツミールを飼料として与えたためとわかりました。ピーナッツに生えていたカビ(Aspergillusflavus)がカビ毒を作ったためで、その原因となったカビ毒は、A.flaとtoxin(毒)をあわせてアフラトキシンと名付けられました。

アフラトキシンには少なくとも16種類の化合物がありますが、毒性や毒力から重要なものは、アフラトキシンB1, B2, G1, G2, M1です。畑土壌にいるカビが食品や飼料となる農作物を汚染し、保存中に発育してB1, B2, G1 ,G2を作ります。そして、家畜、特に乳牛がその飼料を食べると、体内でB1が代謝されて、M1となり乳汁中に排泄されます。そのため牛乳中にM1が含まれることになり、その加工品である粉ミルクやチーズも汚染されることになります。

2.アフラトキシンの毒性

これらのアフラトキシンは大量に摂取するとヒトや動物に急性の肝障害を起こします。主な症状は黄疸、急性腹水症、高血圧、昏睡などです。最近では2004年にケニアでアフラトキシン中毒が発生し、317人の黄疸患者が報告され、そのうち125人が死亡しました(患者致死率:39%)。湿気の多い環境下でトウモロコシを保存したため、保存中にA.flavusが高濃度のアフラトキシンを作り、それを食べたためと考えられました。2005年には、アメリカでアフラトキシンに汚染されたペットフードを食べた犬が23匹死亡し、同じペットフードでイスラエルでも犬23匹が死亡するという事件がありました。

一方、少量を長期間摂取した場合の慢性毒性としては、原発性肝癌の可能性が高くなります。特にアフラトキシンの摂取量が高く、かつB型肝炎ウイルス(HBV)罹患率の高い国や地域における疫学調査では、HBV感染はアフラトキシンによる発癌リスクを高めることが示唆されました。生涯にわたりアフラトキシンB1を体重1kgあたり1ng/日摂取したときの肝臓癌が生じるリスクは、HBV感染者では0.3人/10万人/年、HBV非感染者では0.01人/10万人/年と推定されています。

3.アフラトキシンを作るカビ

亜熱帯地域に生息するAspergillusFlavi節に分類されるカビが作ります。A.flavusは主にアフラトキシンB1, B2を、A.parasiticusA.nomiusはアフラトキシンB1, B2, G1, G2を産生します。

日本古来、麹菌として酒、味噌、しょうゆなどの発酵に使用されてきたA.oryzaeA.sojaeは、A. flavusA.parasiticusと形態学的に非常によく似ています。アフラトキシン発見以降、それぞれが同種か否かで論争が続いていましたが、現在では、分類指標とされている遺伝子群の解析やゲノム解析により、A. oryzaeA.flavus、A.sojaeA.parasiticuはそれぞれ同種で、馴化株と野生株の関係にあるとわかりました。麹菌はアフラトキシンを作らないことが確認されていますが、アフラトキシンを作る酵素の遺伝子群はもっています。菌株の選別や継代の過程でそれらの遺伝子の一部分が欠損し、逆に発に有用な酵素の遺伝子群が発達したと考えられています。

A.flavusは温帯地域にも生息しますが、アフラトキシンを作る株の割合は亜熱帯地域よりずっと少なくなります。日本では西日本以南の地域でアフラトキシン産生株が検出されたことがあります。しかし、現在まで、規制値(10μg/kg)以上のアフラトキシンB1が検出された国産食品はありません。つまり、アフラトキシンに関しては国産食品ではなく輸入食品(原材料を含む)からの曝露(摂取)をいかに少なくするかが課題となります。

4.アフラトキシン汚染食品の実態

アフラトキシンの主な汚染食品は、トウモロコシ、落花生、豆類、香辛料、木の実類です。大豆、小麦、米などの穀類にも低頻度で汚染があります。アフラトキシンはたいへん熱に強く、一旦作られると、通常の加工調理過程ではほとんど分解せず、除去することが困難となります。

表1は2004年から2006年の汚染実態調査(厚労省科学研究)において、市販流通食品885試料中、アフラトキシンが検出された検体の結果だけを抜粋したものです。表中の食品以外、そば麺84試料、生とうもろこし10試料、スイートコーン90試料、コーンフレーク50試料、ポップコーン30試料、米93試料、ごま油30試料、豆菓子30試料、せんべい21試料、乾燥イチジク5試料、ビール20試料及び粉ピーナッツ10試料からはアフラトキシンは検出されませんでした。総アフラトキシンとして、ピーナッツの1試料で28.0μg/kgと、はと麦の1試料で9.71μg/kg検出されましたが、それらを除くと、平均汚染濃度はいずれの食品においても2μg/kg以下でした。

表1 2004〜2006年度に実施されたアフラトキシンの実態調査結果1)
表1

5.アフラトキシンの規制値

日本では、現在、もっとも発癌性が強いB1に対してのみ規制値が定められており、すべての食品から10μg/kg以上検出されてはならないことになっています。しかし、最近、落花生ではB1よりG1の汚染濃度が高い場合が増加してきたことや、コーデックス委員会では総アフラトキシンによる規格策定を進めていることから、日本でも落花生と木の実に総アフラトキシンの規制値を設定することが検討されています。

企画総務部企画調整課 久米田 裕子

コーデックス委員会

食品規格計画の実施機関としてFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で設立した国際政府間組織