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増加するカンピロバクター食中毒

カンピロバクターはニワトリ、ウシ、ブタなどの腸内に棲んでいる細菌ですが、これが付着した食品をヒトが食べると食中毒が起こる場合があります。カンピロバクター食中毒は近年増加傾向にあり、細菌性食中毒の中では発生件数が最も多い食中毒となっています。

1.原因菌の特徴

カンピロバクターは、幅0.2〜0.8μm、長さ0.5〜5μmのグラム陰性の無芽胞桿菌で、その一端または両端に、1本の鞭毛を持っています。カンピロバクターは、この鞭毛を使って、いわゆるコルクスクリュー様の独特な動きを活発にしているため、その形態は1〜2回ねじれた螺旋構造で、この菌を顕微鏡で観察するとS字状に見えます。この形態は、本菌を鑑別する上で重要な特徴です。また、カンピロバクターは、酸素が5〜15%存在する環境でのみ発育する微好気性菌であることも、本菌の重要な特徴の一つです。

現在、カンピロバクターには17菌種が確認されていますが、食中毒の原因として重要な菌種は、C.jejuniとC.coliです。特に、下痢症患者から検出されるカンピロバクターのほとんどが C.jejuniであることから、これが、カンピロバクター食中毒の原因の大部分を占めていると考えられています。

2.症状等

一般に、細菌による食中毒は、10万〜100万個の菌を摂取しないと発症しませんが、カンピロバクターの場合は、少しの菌数(数百個程度)でも発症し、菌が体に入ってから症状が出るまでの期間が2〜5日間とやや長いことが特徴です。その主な症状は、下痢、腹痛、発熱、頭痛及び全身倦怠感などです。下痢は1日に4〜12回にもおよび、便の性状は水様性、泥状で、膿、粘液、血液が混じることも少なくありません。また、症状が回復した後でも、排菌が数週間(4週間位)に及ぶこともあり、ヒトからヒトへの感染例もあるので、注意が必要です。

3.本食中毒の発生状況

図1 大阪府におけるカンピロバクター食中毒の発生件数 
図1 大阪府におけるカンピロバクター食中毒の発生件数

大阪府では、平成11〜14年までは、毎年10件前後で推移していた発生件数が、平成15年には約2倍の21件となり、それ以降年々増加の傾向にあります(図1)。昨年(平成20年)は、大阪府で食中毒が年間96件発生し、患者数は2,071人でしたが、その内訳をみるとカンピロバクターによる食中毒が最も多く38件を占め、患者数は406人でした。

カンピロバクター食中毒の発生状況の特徴としては、サルモネラや腸炎ビブリオ等の他の細菌性食中毒が夏期にピークがみられるのに対し、それよりも早く、5〜7月にピークが見られ、一般に細菌性による食中毒の危険性が少ないと考えられている冬季にも発生していることが挙げられます。

4.原因食品

原因食品が判明したカンピロバクター食中毒事件では、鶏肉及びその内臓が原因であった事例が最も多く報告されています。平成16〜20年度に、当研究所において594検体の鶏肉及びその内臓を検査したところ、279検体からカンピロバクターが検出され、カンピロバクターが高率に付着していることが明らかになっています。鶏肉以外の肉類にも、カンピロバクターが付着していることが報告されており、牛レバーの刺身によるカンピロバクター食中毒の事例も発生しています。

5.食品のカンピロバクター検査法

図2 イムノクロマトキットによるカンピロバクターの検出 
 図2 イムノクロマトキットによる
カンピロバクターの検出

一般的に、食品からのカンピロバクターの検出は細菌培養法により実施されており、食品に付着したカンピロバクターを増やす工程(増菌培養)と増やした本菌を選択的に検出する工程(選択分離培養)から成ります。しかし、カンピロバクターは、増殖速度が遅く、増菌培養に1〜2日間、その後の分離培養に2日間を要するため、結果が得られるまでに非常に長い時間を必要とします。

そこで、当研究所では、カンピロバクターに特異的に結合するモノクローナル抗体(CJ-4B4抗体)を新たに作出し、この抗体を用いてイムノクロマト法*の原理を応用した、カンピロバクターの検出キットを開発しました。本キットでは、陰性検体はコントロールラインのみが出現し(図2の(1))、陽性検体は、このラインに加えて、 テストラインが出現し(図2の(2))、これで陽性と判断されます。本法は分離培養法を行わず、増菌培養液からのカンピロバクターの検出を僅か15分で実施できるため、検査時間を大幅に短縮することが期待できます。

6.予 防

カンピロバクター食中毒は、十分な加熱調理と二次汚染防止を徹底すれば比較的容易に防げる食中毒です。肉類の生食は避け、十分に加熱してから食べること、サラダやおひたしなどは肉類を調理する前に作ったり、手指や調理器具を十分に洗浄・消毒し、他の食品を汚染しないようにすることが重要です。また、カンピロバクターは4℃では10〜14日生存するため、冷蔵庫保存を過信する事は禁物です。

感染症部細菌課 川津 健太郎

イムノクロマト法とは

 捕捉抗体を塗布したメンブレン上を、検体と金コロイド標識抗体が毛細管現象により移動すると、抗体を塗布した場所で、検体中の抗原と金コロイド標識抗体及び捕捉抗体の三者が抗原抗体反応複合体を形成します。
 その結果、生成する標識物(金コロイド粒子)の集積を目視で確認する方法がイムノクロマト法です。