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大阪府における環境放射能水準調査

東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)により発生した福島第一原子力発電所の事故に伴い、放射能の影響が心配されています。当所では約50年間にわたり文部科学省(旧科学技術庁)の委託により環境放射能水準調査を行ってきました。今回、これまで行ってきた水準調査における放射能レベルの推移と、原発事故に伴うモニタリング強化の内容とその結果について報告します。

1.通常の放射能水準調査

(1) 降水の全ベータ放射能の測定

小型及び大型採取器の写真
放射線降下物の採取器

137Cs等の放射性核種を特定せず、大まかな放射能レベルの推移を把握するために、1日に降った雨水を小型採取器に取りベータ線の総量を測定しています。(現在、小型採取器は後述するモニタリング強化において定時降下物の採取に使用しているため、休止しています。)

(2) ガンマ線放出核種分析

放出するガンマ線のエネルギーで放射性核種を同定して測定する分析です。この分析では、どのような核種がどのくらい環境中に存在するかを知ることができます。放射性核種には、自然界にもともと存在する自然放射性核種と核実験や原子炉で人工的に作り出される人工放射性核種が存在します。これらは、人への健康影響という観点では違いは無いのですが、人工放射性核種の推移を見ることで核実験や原発事故等の影響を見ることができます。

図1 137Csの月間降下量の推移
図1 137Csの月間降下量の推移

この調査で検出される人工放射性核種で主なものは137Csです。137Csは、半減期が約30年の核分裂生成物であり、過去の核実験や原発事故等により環境中へ放出されてきました。図1に月間降下物中の137Csの経年変化を示します。大気圏で核実験が行われていた1960〜1970年代以降、現在にかけて減少しており、1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原子力発電所の事故の影響で一時的に上昇したものの、今回の原発事故以前までは低レベルで推移していました。

(3) モニタリングポストによる空間放射線量率値

当所屋上に設置されたモニタリングポスト(NaIシンチレーション検出器)により空間放射線量率を連続測定しています。空間放射線量率の1時間平均値は、現在のnGy/h表示の機器になった1995年以降、34〜72 nGy/h(0.034〜0.072 μGy/h)で推移しています。

2.福島第一原子力発電所事故に伴うモニタリング強化

文部科学省の指示により3月12日(地震発生翌日)18時からモニタリングポストによる空間放射線量率の監視を、また、18日から蛇口水および24時間の降下物のゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線核種分析による監視を行っています。

3.2011年4月の月間降下物から検出された134Csと137Cs

5月26日現在、モニタリングポストによる空間線量率は41〜56 nGy/hの範囲で、平常時の変動範囲内にあります。また、24時間の降下物および蛇口水の核種分析でも人工放射性核種は検出されていません。

しかし、平行して行っている通常の水準調査の2011年4月の1ヶ月分(4月1日〜5月2日)の降下物から134Csが8.3 MBq/km2 137Csが7.9 MBq/km2検出されました。この調査は大型採取器に水を張り、約1ヶ月間に降った雨とちりを集め濃縮乾固した試料を長時間測定(約22.2時間)するものです。これに対し、モニタリング強化の降下物の測定は、迅速に状況を把握するために、小型採取器で1日に降った雨を、降らなければ塵を精製水で洗浄して集め、濃縮無しにその一部を直接、約6時間測定するものです。このため、検出限界の関係で毎日の測定ではとらえられなかった微量な物質が徐々にたまり、1ヶ月分で検出されたと考えられます。

137Csは、福島第一原発の事故以前は前述のように低レベル(例えば2006年4月の1ヶ月分は0.05 MBq/km2でした)で推移していました。また、134Csは1988年秋に当所に核種分析装置が入って以来、初めて検出されたものです。そのため、おそらくこれらの物質は原発事故で放出されたものと推測されます。しかしそのレベルは、図1のように過去に核実験が行われていた頃や、チェルノブイリ原発事故当時に大阪に降った降下物より、かなり低い値となっています。

4.おわりに

府内の環境放射能のレベルは、一部で原発事故の影響がみられるものの、現在のところ特に問題となるものではありません。今後とも文部科学省の指示のもと、モニタリング強化に伴う監視および通常の調査を並行して進め、環境放射線の監視を継続していきます。

衛生化学部生活環境課 肥塚 利江