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背 景

私は、大阪大学で8年半にわたり医学系研究科保健学専攻分子微生物学研究室を主宰し、その間、細胞内寄生性細菌の感染機構の解明や、薬剤耐性菌の分子疫学的研究を中心に行ってまいりました。また、基礎医学領域とは趣が異なるものの学際領域研究として、X線顕微鏡の医学生物試料解析への応用研究や、医療経営教育に関わる事業など多彩な研究教育活動を展開してきたと自負しております。このような多面的な研究教育活動に対する姿勢は、私自身が大阪大学着任前に18年余に渡って経験した米国の大学での研究教育によって培われたのかとも思っています。米国に身を置く前も、日本で複数の大学で研究教育に携わってきました。今までを振り返りますと、種々の場面や環境において多様な視点の取り組みがいかに大切さかを実感し、真摯に取り組んできたことが今までの研究や事業への取り組みに反映されてきたとも思っております。

近年は,タイやベトナムを含むアジアの国々で、病原細菌の分子疫学的研究を展開しており、感染症と各種疾患や対象地域の公衆衛生状況との関連性についての調査研究から新知見を探っています。海外、特にアジアの研究者との共同研究の実体験から社会貢献の重要性を痛感したため、研究成果をいかに社会に還元するかという社会実装についての取り組みも始めたところです。

ベトナム・ホーチミン市生鮮食品卸売市場での海水産物

ベトナム・ホーチミン市生鮮食品
卸売市場での海水産物

科学技術振興機構地球規模課題対応国際科学技術協力事業(SATREPS)感染症分野プログラム「薬剤耐性細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリングシステムの開発」プロジェクト(研究代表・山本)による視察調査

ベトナムでの現地研究機関との打ち合わせ会議風景

ベトナムでの現地研究機関との
打ち合わせ会議風景

(立って説明しているのが筆者)

このような長年の大学経験を通して人材育成が如何に重要かを痛感しています。言うまでもなく、事を成そうとするときにそれを担う良い人材を見出すことができれば事業の大方は達成されたと言っても過言ではありません。人材を発掘することに加え、既存の人材を継続的に育てることが、複雑で総合的な対応を求められる研究と業務を遂行してゆく組織目標の達成においては必須項目であります。如何に良い人を見つけるか、あるいは良い人を育てるかに腐心しなければならないことは、新任地の本研究所においても同様であると確信しております。

抱 負

大学人であった私にとって、本研究所は新天地への赴任であります。しかし、本研究所が、地方衛生研究所として府民の健康の確保という基本的な使命を確実に行うために、“各種業務が信頼性高く、遅滞無く遂行されることを可能とする体制を統括し、所員の能力を最大限に引き出し、組織目標に向けてベクトルを形成して達成に導くこと”が、私に課せられた使命であると理解しています。外部から赴任した利点を生かし、外部から見える研究所の利点をより大きく伸ばし、弱点を所員相互で補完しあう体制の強化は私に課せられた喫緊の課題と捉えております。多くの先輩の努力によって本研究所が構築してきた、組織の行政統治と法令順守と透明性確保の取り組み、調査研究および検査業務水準の向上努力、健康危機管理の予見的・先見的対応の強化を可能にする海外との交流を含めた所外との共同研究、等は、私共がバトンを引き継ぎ継続的かつ発展的に実施せねばならぬものと考えております。

さて、研究所本館は築50年以上を経過し、耐震性の問題からも移転建替えについて検討されています。建物に限らず、その組織形態についても時代のニーズに合わせ組織改正を繰り返しており、今後も基本的な使命の遂行に効率的に対応できる形への変換が引き続き求められるものと思われます。

本研究所は、過去に勃発した多くの健康危機に対して適切に対応してきた歴史的実績を有しております。幾つかの事例では大阪大学微生物病研究所をはじめ他機関と共同し、本邦において先導的な対応をしており、その存在感は際立っております。このような高い能力を有する組織の維持とさらなる向上は府民の求める所であると確信するところです。 就任にあたり、所員一同と共に精進努力してゆくことをお誓い申し上げます。府民および関係機関の皆さまには、より一層のご支援、ご指導を賜りますようお願いいたします。