HOMEページ公衛研ニュース > O157以外の腸管出血性大腸菌

1.日本の発生状況

2000年から2010年の11年間に病原微生物検出情報に報告された集団事例(菌分離陽性者11名以上)は163事例で、このうちO157によるものが80事例、O26が61事例、O111は12事例(表1)、その他が10事例ありました。O157は、焼肉店や施設の給食などが原因と推定されることも多いのですが、O26やO111は、保育所で直接あるいはタオルやおもちゃを介して、ヒトからヒトへと感染したと考えられる事例が多いのが特徴です。O111で食品媒介が明らかな事例は、2004年の高校修学旅行事例のみでした。この事例では、修学旅行に参加した高校生、教職員、旅行会社添乗員の計378人のうち110人が発症し、O111を中心にO26やO146など10タイプのEHECが分離されましたが、重症者はありませんでした。

表1 病原微生物検出情報に報告されたO111による集団事例(2000〜2010年)

日本の発生状況

しかし、今年4月下旬から富山県を中心に4県から発生報告のあった焼肉チェーン店でのEHEC食中毒事例は、患者数181名、死者5名を出しました。実は、O111による死者はこの事件が初めてではなく、1986年には松山市の乳児院で集団下痢症が発生し、2歳9ヶ月の女児が亡くなっています。今回の事例では、溶血性尿毒症症候群(HUS)発症率が約17%と高いうえ、急性脳症の発症率も高かったと報告されていますが、その理由はわかっていません。

2.大阪府における発生状況

表2 大阪府で発生したO157以外のEHEC感染症
(1996年8月〜2011年8月)

チクングニア熱に感染する危険がある地域の分布(WHOホームページより改変)

1996年以降、大阪府ではO157以外のEHECによる感染症が126事例239名発生しています(表2)。集団事例の原因となったのはO26だけですが、O111やO103などによる家族やグループでの感染も珍しくありません。HUS症例もO165で2事例、O111とO177で各1事例あり、血便や腹痛で入院する症例もみられます。無症状や軽い下痢程度ですむ場合もありますが、O157と同様に少量の菌で感染するため、二次感染には注意が必要です。

今夏、7月下旬から8月上旬にかけて大阪府では3事例5名のO145感染者が確認されました。昨年までの感染者数が2名だったことから、事例間の関連性が疑われ、当所でパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法*による遺伝子型別を実施したところ、2事例3株は極めてよく似たパターンでしたが、1事例2株は異なるパターンであることがわかりました。ところが、今年は全国的にO145の報告が多く、特に第30週(7月25日〜31日)から増加していることがわかりました。国立感染症研究所では、全国で分離されたEHECのPFGE型別を実施していますが、これまでに、大阪府で発生したO145事例の中に、北陸や四国で分離された株とPFGEパターンの一致する株があったことがわかっています。同じ菌に汚染された食品を介した広域流行の可能性も考えられ、分離株の遺伝子型別を進めるとともに、喫食歴や食材のさかのぼり調査の結果が待たれます。

3.おわりに

“楽しかった外食で家族を失う” こんな不幸を二度と起こさないために、生食用食肉の規格基準が設定され、10月1日から実施されています。安全な食品を提供するために行政や生産・加工業者の努力が必要であることは言うまでもありませんが、消費者のみなさんもご家庭での食品の取扱いには注意してください。

感染症部細菌課 勢戸 和子

*パルスフィールド・ゲル電気泳動法

細菌の遺伝子(DNA)を特定の塩基配列を認識して切断する酵素(制限酵素)で切断し、DNA断片の電気泳動パターンを調べる方法