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暫定規制値を超過する放射性セシウムが
検出された乾しいたけについて

昨年3月に発生した福島第一原発事故に伴う放射性物質による食品汚染問題を受けて、大阪府では食品中の放射性物質の検査を実施※1しています。今回は、その検査体制の概要と、検査結果の一例として、「乾しいたけ」から暫定規制値を超過する放射性セシウムが検出された事例について紹介します。

1.食品中の放射性物質の検査体制について

表1 大阪府における食品中の放射性物質の検査体制

表1 大阪府における食品中の放射性物質の検査体制

表2 食品中の放射性物質の暫定規制値(平成24年1月現在)

表2 食品中の放射性物質の暫定規制値(平成24年1月現在)

その他にもウラン、プルトニウム、超ウラン元素のアルファ核種に対して
暫定規制値が定められています。

表1に大阪府における食品中の放射性物質の検査体制の概要を示しました。検査について簡単に説明します。まず、過去に出荷制限や自粛がかけられた地域産の農産物や水産物を中心に、府内各所の小売店や市場から食品を収去※2します。次にこれらの収去検体を必要に応じて水洗、細切・粉砕した後、専用の容器に詰めてゲルマニウム半導体検出器でガンマ線を測定します。その測定データを解析して3種類の放射性物質(ヨウ素131、セシウム134、セシウム137)の濃度を算出します。厚生労働省が定めた暫定規制値(表2)を超える検体があれば、食品衛生法に基づき当該食品の出荷・流通を停止する措置が講じられ、その情報は報道発表や大阪府のWebサイト等で随時公表されます。

「大阪府内でと畜される牛の肉」については、食肉衛生検査所においてシンチレーションサーベイメータを用いたスクリーニング検査が実施されています。スクリーニング検査で規制値違反疑いの牛肉が見つかった場合は、当所のゲルマニウム半導体検出器を用いて、より精密な確認検査を行い、その結果に基づき最終的な行政対応を決定します。

2.乾しいたけからの放射性セシウム検出事例

昨年12月に、府内で収去された乾しいたけの袋詰製品4検体のうち、2検体から暫定規制値(500 Bq/kg)を超える640 Bq/kg、1,270 Bq/kgの放射性セシウムが検出された事例がありました。関連業者への聞き取り調査から、これらの製品には、生産県が出荷自粛・自主回収を要請した乾しいたけ(原木栽培品)が使用されていたことが確認され、直ちに回収措置が講じられました。

測定に使用したゲルマニウム半導体検出器

測定に使用したゲルマニウム半導体検出器

生のしいたけを乾燥させると、水分が抜けて約10分の1の重量になることが知られています。このとき、しいたけ1本あたりに含まれる放射性物質の「絶対量」が変化しないと仮定すると、しいたけ本体が軽くなった分、その重量あたりの「濃度」は約10倍に上昇することになります。

当所でも640Bq/kgの放射性セシウムが検出された乾しいたけ検体の一部を用いて、5℃で3時間水戻しした後に放射性物質の測定を行ってみました。その結果、放射性セシウム濃度は70 Bq/kgとなり、約10分の1の濃度になることが確認されました。

したがって、「生の状態であれば規制値未満」のしいたけであっても、「乾燥製品にすると規制値超過」となってしまう可能性があります。また、一般的に乾しいたけをそのまま食べることは極めてまれであり、通常は水戻しした後に調理・喫食されます。以上の観点から、「乾しいたけ」そのものに500Bq/kgの暫定規制値を適用するのは不適当であり、水戻し後に検査を実施すべきとの意見・要望がしいたけ生産地の知事等から出されています。

現在、国で準備を進めている食品中の放射性セシウムの規制値の引き下げ(今年の4月に施行予定)に関する対策部会の資料には、原則的な考え方として「乾燥きのこ類、乾燥海藻類、乾燥魚介類、乾燥野菜など原材料を乾燥させ、水戻しを行い、食べる食品については、食用の実態を踏まえ、原材料の状態と食べる状態(水戻しを行った状態)で一般食品の基準値を適用する。」との新たな方針が示されており、近い将来には、乾しいたけの検査は水戻ししてから実施することになりそうです。

3.おわりに

「食の安全・安心」を確保するため、大阪府では、平成24年度も引き続き、食品中の放射性物質の検査・監視体制の強化に取り組んでいく予定です。放射性物質の検査結果や規制値違反食品の回収情報等については、大阪府のWebサイト  http://www.pref.osaka.jp/shokuhin/hosyasen/ でも随時公開しています。

衛生化学部食品化学課 阿久津 和彦

※1

原発事故以降、全国的にゲルマニウム半導体検出器の新規需要が急増したことにより、国内の在庫が欠品し、当該装置の調達に時間を要する状況がしばらく続きました。大阪府では早期の検査対応を計画していたのですが、上記の事情に加えて、装置を設置するための機器室の整備工事が必要であったこと等から、やや遅れて8月からの検査開始となりました。

※2

食品衛生法や薬事法に基づく検査のため、食品衛生監視員や薬事指導員が製造所や販売店等に立ち入り、必要最小限の検体(食品、医薬品等)を無償で採取する行為を「収去」と言います。