タバコによる室内空気汚染

- 健康への影響と対策 -

常、事務所ビルの主な空気汚染源はタバコの煙です。喫煙者のいる事務所では、平均して、在室者1人が1時間に1.2〜1.3本のタバコを吸い、1本のタバコからは約10mgの浮遊粉塵が発生するという調査結果があります。

1.喫煙による室内空気汚染

 1時間に1本の喫煙(浮遊粉塵10mg)があった場合を考えてみましょう。外気(浮遊粉塵を0.05mg/m3と仮定)で換気して、浮遊粉塵の濃度をビル衛生管理基準の0.15mg/m3以下に抑えるためには、計算上100m3の外気が必要となります。この値は、1時間1人あたりの空調の外気取入量30m3(CO2のビル衛生管理基準の0.1%をもとに設定)の3倍に達します。したがって、タバコの煙の浮遊粉塵を外気だけで希釈し、除去するのは技術的に困難だということになります。

2.空調での除去限界

 快適環境と省エネルギ−の目的から、最近のビルは気密化しており、タバコの煙で汚染された室内空気は70%前後がビルを再循環します。空気清浄装置の組み込まれた空調でも、浮遊粉塵の0.5μm以下の小さな粒径のタバコ煙では、ガス状成分も含め80〜90%しか除去されません。筆者らの調査では、窓を開閉できないビルで喫煙場所を決めている場合でも、勤務時間中の平均浮遊粉塵量は、ビル衛生管理法で定められた基準を半数以上が越えていました。

3.タバコの煙と副流煙

 タバコの煙の浮遊粉塵には、タ−ルやニコチン、多環芳香族炭化水素などの他、ガス状有害成分としてアンモニアやアルデヒド、二酸化炭素、二酸化窒素などが多く含まれます。また、タバコの先から立ちのぼる副流煙は、喫煙者の吸う主流煙よりも刺激性が強く、有害成分の量も多いのです。さらに、粒径も副流煙の方が小さく(約0.4μm、主流煙は約0.7μm)、肺の深部にまで吸入されます。

4.受動喫煙による健康影響

 タバコの受動喫煙の指標として、タバコの主成分のニコチンの代謝物であるコチニンの尿中濃度を測定した結果、図2に示すように、職場喫煙者率が高いほど、尿中コチニン量も多い結果が出ています。

受動喫煙の健康影響はいろいろありますが、急性影響としては、目、鼻、ノドの粘膜の刺激、かゆみや涙、くしゃみ、咳などの症状や不快感等があり、アレルギ―性鼻炎、風邪、頭痛の要因になるといわれています。慢性影響としては、呼吸機能障害や肺がん、循環器疾患等があげられており、妊婦の低体重児出産等のリスクが高まるなどの報告もあります。各種の調査結果でも、70〜90%は他人のタバコの煙を迷惑、不快だと感じています。

5.「分煙」対策と労働安全衛生法・指針

 職場における受動喫煙の対策としては、喫煙場所(室、コ−ナ−)を分離設置し、空調・換気を別系統にして局所的に排気し、それ以外の場所では禁煙とする「分煙」が最も効率的、かつ経済的です。これによりタバコの煙による室内空気汚染問題は抜本的に解決します。図3にその分煙対策効果の一例を示します。

 喫煙者が多い職場で分煙をするのに抵抗がある場合は、対策委員会を設け、プログラムを策定し進めることが有効でしょう。既に労働安全衛生法では、第71条2〜4「快適な職場環境の形成のための措置」で、事業者に快適な職場環境の維持管理を義務づけ、指針では、“たばこの煙や臭いに不快を感じている労働者がいる場合には、事業所の実態に応じ、喫煙場所の指定等の適切な喫煙対策をとること”との内容が盛り込まれています。また、これとは別に、労働省より喫煙対策のガイドラインが出され、厚生省や人事院からも同種のものが出されています。非喫煙者が意に反してタバコの煙を吸わされている状況の早期改善が望まれます。

公害衛生室 野上 浩志