目 次

  • 食品中の残留農薬
  • 食品衛生検査とGLP
  • タバコによる室内空気汚染 - 健康への影響と対策 -


  • 食品中の残留農薬

    品衛生部食品化学課では、20数年前から、府内で市販されている種々の食品中の残留農薬検査を行い、汚染の実態調査を実施してきました。当所の検査は、国の検疫所で行う輸入品の水際での検査とは異なり、既に市販流通している食品を対象にしています。もし、食品衛生法に定められている残留基準をオーバーした値が検出されると、行政を通じて生産自治体に連絡され、検体の当該生産団体や生産者に適切な農薬使用をするよう厳しい指導が行われます。また、在庫がある品物については販売禁止措置が取られます。監視効果があるためか、幸いにしてそのような検体は年間数例以下というのが現状です。 

     表1に掲げた食品群は、各種食品を全部で13群に分別しています。その結果、食品群別に残留農薬の種類をある程度分類することができました。これまでの当所における成績をまとめて紹介します。

    世界の先進国では、有機塩素系農薬のDDT、BHCや化学工業製品のPCBは、その強い残留性や蓄積性のために使用が禁止されています。しかし、現在も発展途上国で使用されたり、環境に残留したりしている結果、私たちはこれらの物質を動物性食品から全体の食品の中の65〜96%を摂取していることを確認しました。その内訳は、10群の魚介類から全体の40〜80%、食肉類から10〜20%、乳製品から3〜10%でした。

    環境汚染物質は、最終的に海に到達し、食物連鎖を通して魚類に多く蓄積されます。有機塩素系農薬で汚染された海の沿岸で生息し、しかも魚食性という特性を備えた魚(サワラの身やアンコウの肝など)から、これらの化合物が多量に検出されてきました。また、農薬ではありませんが、類似した化学構造を持つ強毒性のダイオキシン類は、工業先進国の沿岸性魚類の残留濃度が高い傾向にあるようです。

    果実類では、殺虫剤のメチダチオン、クロルピリホス、カルバリル等が多く検出されてきたのに対し、野菜類では、これらの検出率は低い傾向にありました。

    野菜類(7、8群)では、殺菌剤のクロロタロニルやプロシミドン、殺虫剤のピレスロイド系農薬や土壌残留性の強いディルドリンの他、多種類の有機リン系農薬が検出されました。

    小麦や小麦製品が多くを占める穀類や菓子類では、微量ながら、殺虫剤のマラチオン、クロルピリホスメチル、フェニトロチオンの3種の有機リン系農薬が高い頻度で検出されます。我が国は、小麦の90%前後を外国からの輸入に頼っており、ポストハーベスト(収穫後使用)農薬として使用されたものが残留している場合もあると言われています。

    一方、1群のコメからは、殆ど農薬が検出されませんでした。我が国が悪天候に見舞われ、コメの生産量が大幅に減少した平成5年度の輸入米を含めて、最近5年間に行った玄米及び精白米、合計約130検体の中で、農薬が検出されたものは10検体未満でした。

    1994〜1996年の野菜、果実、穀類等の農産物からの農薬検出率は、国内産、輸入品ともに約20%前後でした。(1991〜1997年の国内産では、1,110検体中、検出農薬数は延べ244で、ほぼ20%の検出率)

     以上のことから、私たちは、摂取する残留農薬のリスクを低くするため、また、栄養のバランスを保つためにも、多種類の食品をまんべんなく食べることが肝要かと思われます。

     当所では、毎年、国内産、輸入品を合わせて、約350検体以上の野菜、果実、穀類(概ね各70〜80種類の農薬)及び約110検体以上の乳肉魚介類(高蓄積性農薬、各約20種)を検査し、食生活の安全確保に努めています。今後、GLP(次項参照)をさらに推進し、分析できる農薬数を増やして、国を挙げての目標である200種農薬の分析体制の確立を目指して行きたいと思います。

    食品化学課 桑原 克義


    食品衛生検査とGLP


    年、残留農薬、環境ホルモン、病原微生物など食品の安全性に関する問題が多様化、複雑化してきています。これら諸問題に対応した検査の重要性が増すなかで、分析技術は高度化し、ppmレベル以下の精度を要求される検査が増加しています。さらに、食品の輸出入拡大に伴い、食品検査の信頼性確保のための体制の整備が国際的に求められています。
     食品検査の信頼性を客観的、科学的に保証できるものにするためには、GLP体制の確立が不可欠であり、検査部門と信頼性確保部門が協議を密にして、問題点を解決していく必要があります。

    1. GLPとは

     GLP(Good Laboratory Practice:試験実施適正基準)とは、一言でいいますと、食品の理化学的検査、微生物学的検査及び動物を用いる検査を適正に行うための実施手順を、ハードとソフトの両方について定めたものです。具体的実施にあたっては、「食品衛生検査施設における検査等の業務管理要領」が平成9年1月に厚生省から通知されています。

    2.実施手順と効果

     食品の検査業務に関し、組織、検査室、機械器具、試薬、試験品、検査手順、精度管理などについての具体的な管理基準を定め(図1)、それらに基づき検査を実施し、その信頼性のチェックを検査に関わらない第三者が行うことにより、次のような効果が期待できます。

    ・信頼性確保部門を検査部門から独立させることにより、検査業務を客観的に評価できる。

    ・検査手順等を標準化、文書化することにより、短期間で検査法を習得でき、検査データの安定性も向上する。

    ・記録の徹底など検査業務の透明化を図ることにより、検査成績の信頼性を対外的に証明できる。

    3.GLP導入にあたっての問題点

     GLPを全面的に導入するには、検査室や検査機器類の整備、業務量増加に伴う人員確保などの基本的な問題のほかに、以下のような更に検討を要する課題があります。

    ・GLPの中で最も重要なものの一つに内部精度管理(日常検査時に既知量の検査対象物質を添加した試験品も同時に検査して精度を管理すること)があり、検査項目によってはこの実施が非常に困難なものがある。(例えば、容器包装の溶出試験など)

    ・微生物学的検査では、対象とする微生物量が容易に変化するため、精度管理用試験品の調製が難しく、内部精度管理の実施方法を複雑にしている。

    ・動物を用いた魚介毒検査の精度管理では、標準品の確保が困難である。

     当所では、平成10年度から検査部門で3名(理化学2名、微生物1名)、信頼性確保部門で2名(技術系1名、事務系1名)が増員となり、本格的な取り組みを始めました。

    検査管理室 南 庄吾


    タバコによる室内空気汚染

    - 健康への影響と対策 -

    常、事務所ビルの主な空気汚染源はタバコの煙です。喫煙者のいる事務所では、平均して、在室者1人が1時間に1.2〜1.3本のタバコを吸い、1本のタバコからは約10mgの浮遊粉塵が発生するという調査結果があります。

    1.喫煙による室内空気汚染

     1時間に1本の喫煙(浮遊粉塵10mg)があった場合を考えてみましょう。外気(浮遊粉塵を0.05mg/m3と仮定)で換気して、浮遊粉塵の濃度をビル衛生管理基準の0.15mg/m3以下に抑えるためには、計算上100m3の外気が必要となります。この値は、1時間1人あたりの空調の外気取入量30m3(CO2のビル衛生管理基準の0.1%をもとに設定)の3倍に達します。したがって、タバコの煙の浮遊粉塵を外気だけで希釈し、除去するのは技術的に困難だということになります。

    2.空調での除去限界

     快適環境と省エネルギ−の目的から、最近のビルは気密化しており、タバコの煙で汚染された室内空気は70%前後がビルを再循環します。空気清浄装置の組み込まれた空調でも、浮遊粉塵の0.5μm以下の小さな粒径のタバコ煙では、ガス状成分も含め80〜90%しか除去されません。筆者らの調査では、窓を開閉できないビルで喫煙場所を決めている場合でも、勤務時間中の平均浮遊粉塵量は、ビル衛生管理法で定められた基準を半数以上が越えていました。

    3.タバコの煙と副流煙

     タバコの煙の浮遊粉塵には、タ−ルやニコチン、多環芳香族炭化水素などの他、ガス状有害成分としてアンモニアやアルデヒド、二酸化炭素、二酸化窒素などが多く含まれます。また、タバコの先から立ちのぼる副流煙は、喫煙者の吸う主流煙よりも刺激性が強く、有害成分の量も多いのです。さらに、粒径も副流煙の方が小さく(約0.4μm、主流煙は約0.7μm)、肺の深部にまで吸入されます。

    4.受動喫煙による健康影響

     タバコの受動喫煙の指標として、タバコの主成分のニコチンの代謝物であるコチニンの尿中濃度を測定した結果、図2に示すように、職場喫煙者率が高いほど、尿中コチニン量も多い結果が出ています。

    受動喫煙の健康影響はいろいろありますが、急性影響としては、目、鼻、ノドの粘膜の刺激、かゆみや涙、くしゃみ、咳などの症状や不快感等があり、アレルギ―性鼻炎、風邪、頭痛の要因になるといわれています。慢性影響としては、呼吸機能障害や肺がん、循環器疾患等があげられており、妊婦の低体重児出産等のリスクが高まるなどの報告もあります。各種の調査結果でも、70〜90%は他人のタバコの煙を迷惑、不快だと感じています。

    5.「分煙」対策と労働安全衛生法・指針

     職場における受動喫煙の対策としては、喫煙場所(室、コ−ナ−)を分離設置し、空調・換気を別系統にして局所的に排気し、それ以外の場所では禁煙とする「分煙」が最も効率的、かつ経済的です。これによりタバコの煙による室内空気汚染問題は抜本的に解決します。図3にその分煙対策効果の一例を示します。

     喫煙者が多い職場で分煙をするのに抵抗がある場合は、対策委員会を設け、プログラムを策定し進めることが有効でしょう。既に労働安全衛生法では、第71条2〜4「快適な職場環境の形成のための措置」で、事業者に快適な職場環境の維持管理を義務づけ、指針では、“たばこの煙や臭いに不快を感じている労働者がいる場合には、事業所の実態に応じ、喫煙場所の指定等の適切な喫煙対策をとること”との内容が盛り込まれています。また、これとは別に、労働省より喫煙対策のガイドラインが出され、厚生省や人事院からも同種のものが出されています。非喫煙者が意に反してタバコの煙を吸わされている状況の早期改善が望まれます。

    公害衛生室 野上 浩志


    発行日:平成10年11月4日

    編 集:大石、中村、山吉、桑原、東、味村

    事務局:薬師寺 、渋谷(内線297)