HOMEページ公衛研ニュース > ヒスタミン食中毒 −食品に含まれるヒスタミンについて−

1. 食品におけるヒスタミンの生成

 食品に含まれるヒスタミンは、ヒスタミン産生菌が有するヒスチジン脱炭酸酵素の働きで、アミノ酸の一種であるヒスチジンが分解されて生成されます(図1)。食中毒の原因食品の多くは、遊離ヒスチジン含量の高いマグロ類、カツオ類、サバ類等の赤身魚とその加工品です。これらの魚介類の加工・流通・調理の段階で低温状態を保持できなかった結果、ヒスタミン産生菌が増殖しヒスタミンが生成されます。本年10月に発生したツナ缶の自主回収事例は、原料の保管温度に問題があったことが原因とされています。また、ヒスタミンは熱に安定であるため、一度生成されると加熱しても分解されることはありません。食中毒発生防止のためには加熱調理の有無に関わらず、生食用と同様の衛生管理を行う必要があります。

図1. ヒスタミンの生成経路

図1. ヒスタミンの生成経路


2. 日本国内のヒスタミン食中毒発生状況

ヒスタミン食中毒は、高濃度のヒスタミンを含有する食品(ヒスタミン22〜320 mg程度)を摂取後、数分から30分位で顔面紅潮、口部灼熱感、発疹、頭痛等の症状を呈します。通常は重症化することはまれであり、抗ヒスタミン剤の投与により回復します。


厚生労働省の食中毒統計では、平成20年から平成24年までの5年間においてヒスタミン食中毒の総発生件数は55件、患者数は1,351人、死者数は0人でした。食中毒事例全件数に対するヒスタミン食中毒発生件数の割合は例年1%前後で推移していますが、化学性食中毒事例の多くはヒスタミン食中毒です。平成21年に北海道の学校給食で患者数279名の大規模な食中毒が発生するなど、原因施設が給食施設である場合に患者数が増加する傾向が見られます。


3. 海外および日本国内のヒスタミン規制状況

海外では、食中毒の発生防止および鮮度や細菌汚染の指標とする目的で、ヒスタミンの基準値が設定されています(表1)。国際機関のCodex委員会は、遊離ヒスチジン含量の高い魚類とその加工品を対象に基準値を定めており、EUやカナダ、オーストラリア・ニュージーランドは概ねCodex委員会に従った基準値で規制しています。

 

日本国内では、食品に含まれるヒスタミンの基準値は設定されていませんが、平成20年に特定製造者が製造したインドネシア産マグロ加工品の食中毒が発生した事例では、Codex委員会の基準値200mg/kgを超えてヒスタミンを検出した製品の輸入制限を定めた通知が出されました(平成20年12月3日付け食安輸発第1203001号)。生食用の鮮魚は、生食用鮮魚介類の規格基準が適用されるため適切な衛生管理が実施されます(平成13年厚生労働省告示第212号及び213号)。また、各省庁や業界団体から消費者および事業者向けのガイドラインが出されており、衛生管理の徹底によりヒスタミン食中毒の発生を防止する取り組みが行われています。今後、食品の安全性基準の国際化により日本国内におけるヒスタミン基準値の設定が考えられます。

表1. 海外のヒスタミン規制値(一部を記載)
表1. 海外のヒスタミン規制値(一部を記載)

4. 公衆衛生研究所の取り組み

当所では、大阪府食品衛生監視指導計画に基づき、販売店に流通する魚介類加工品を対象に細菌課でヒスタミン産生菌の検査を、食品化学課でヒスタミンの検査を実施しています。食中毒発生時には、原因究明のための調査を実施します。

 

検査では、食品から抽出したヒスタミンを蛍光試薬で標識し高速液体クロマトグラフで分析しますが、魚介類加工品には分析の妨害となる脂質やアミノ酸が含まれています。そこで、精製方法を改良し、魚介類加工品に適用可能かつヒスタミンに特異的な分析法を開発しました。今後、日本国内におけるヒスタミン基準値の設定を視野に入れ、検査体制の充実に取り組んでいきたいと考えています。



参考文献

詳細な情報については、下記文献をご覧下さい。
 ・内閣府食品安全委員会委員会ホームページ:ヒスタミン(概要)ファクトシート 作成日平成25年2月4日
  http://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/130204_histamine.pdf
 ・農林水産省ホームページ:個別危害要因への対応(有害化学物質) 食品安全に関するリスクプロファイルシート(検討会用)(化学物質)更新日2012年12月5日
  http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/pdf/121205_histamine.pdf
 ・登田ほか,国内外におけるヒスタミン食中毒,国立医薬品食品衛生研究所報告,127, 31-38(2009)
  http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2009/031-038.pdf


衛生化学部食品化学課 粟津 薫