HOMEページ公衛研ニュース > アデノウイルス感染症とは?

1.アデノウイルスの特徴
 ヒトアデノウイルスは2本鎖DNAウイルスで、大きさが約80nmの正二十面体構造を呈しています。表面タンパクは240個のヘキソンと頂点にある12個のペントンベース、そしてそこから突起状に伸びるファイバーで構成されています(左下図)。エンベロープ(ウイルスを包む膜)は持たずアルコールに耐性を示しますが、塩素系の消毒剤では不活化されます。以前は51血清型に型別されていましたが、ウイルス遺伝子の解析により52〜54型が新型のアデノウイルスとして追加されました。全ての型はA種からG種のいずれかに属しています。また近年、ウイルス遺伝子に新たな変異や組換えを持つアデノウイルスが55型以降の新型候補として日本を含む各国から複数報告されており、実際に56型や57型は国内でも検出されています。       


アデノウイルスの模式図
      

2. アデノウイルスの検出
 アデノウイルスはイムノクロマト法による迅速キットにより検出が可能ですが、ウイルスを型別するにはさらに詳しく調べる必要があります。以前は分離株の中和試験による血清型別を行っていましたが、その方法では新型アデノウイルスの型別が困難なことから、ウイルス遺伝子を用いた解析が主流となっています。大阪府立公衆衛生研究所では咽頭や結膜のぬぐい液、糞便などの検体から培養細胞を用いてウイルス分離を試み、分離陽性の場合はウイルス株の塩基配列を解析することにより型別を行っています。しかし、ウイルス分離には数週間かかり、さらに検体の状態やウイルスの型によっては分離が困難な場合もあることから、必要に応じて検体中に存在するウイルス遺伝子の検出・解析による同定も行っています。       

      

3.アデノウイルス感染症の症状
 アデノウイルスは年間を通して検出されます。呼吸器感染症(咽頭炎、急性呼吸器疾患、肺炎)や咽頭結膜熱、流行性角結膜炎などを引き起こし、種および型と疾患には関連があることが知られています(表)。症状は無症状や軽症から重症まで幅広く、特に小児にとって重要な感染症です。小児の呼吸器感染症の数%、胃腸炎の約1割がアデノウイルスによると考えられます。感染症法に基づき実施される大阪府の病原体サーベイランスでは、上気道炎や咽頭結膜熱でウイルス分離陽性となった小児の約9割が5歳以下で、そのうち1歳以下の乳幼児が約5割を占めています。分離された型ごとにみると2型の検出が最も多く、次いで3型、1型の順となっていて、これら3つの型で小児の呼吸器から分離されたアデノウイルスの約8割を占めています。一度感染した型に対しては長期間免疫が持続すると考えられ、広く流行している型への免疫は小児の早い時期に獲得すると考えられます。

 呼吸器感染症:咽頭炎は主に1〜7型が原因で、発熱を伴い、小児で多くみられます。急性呼吸器疾患は4型、7型が原因となることが多く、小児で多くみられますが、成人での集団発生も起こっています。咽頭炎や咳、発熱がみられます。国内では過去に7型による肺炎例が、さらに海外では14型や55型による重症化例が報告されています。
 咽頭結膜熱:主に1〜7型が原因で、咽頭炎、結膜炎、発熱を伴います。主に小児でみとめられ、プールで感染することがあるため、プール熱とも呼ばれます。
 流行性角結膜炎:国内では近年、8型、37型、53型、54型、56型が検出されています。結膜炎から始まり角膜炎に進展することがあります。年齢に関わらず感染し、感染性が強いため注意が必要です。
 胃腸炎:主に40型、41型が原因で、まれに31型も検出されます。小児で多くみられ、下痢や嘔吐を引き起こします。
 出血性膀胱炎:主に11型が原因となりウイルスは尿中に排泄されます。血尿や頻尿などの症状がみられ、小児のうち男児に多いとされています。       


表. アデノウイルスの種と疾患
 

      

4. 感染を防ぐために
 一般的には、アデノウイルスは上気道や結膜などで増殖するため、飛沫感染や接触感染で広がると考えられます。また、酸に抵抗性が高く、飲み込んだウイルスが消化管で増殖し糞便中にも排泄されることがあります。アメリカでは4型および7型に対する経口生ワクチンが開発され、米軍で使用されていますが、日本では実用化されているワクチンはありません。また、今のところ治療薬はないため、発症した場合は対症療法となります。看病などで感染者と接触するときは感染予防のために排泄物等の取り扱いには注意し、手洗いの徹底やタオルの使い分けなどにも注意を払う必要があります。       


                                              

感染症部ウイルス課 廣井 聡