HOMEページ公衛研ニュース > 乳幼児期の身近なウイルス感染症−手足口病について−

ウイルス感染症にはワクチンで予防可能なものと、ワクチンが未だに開発されていないものがあります。代表的なワクチンで予防可能な感染症として、麻疹、風疹、日本脳炎、水痘 (みずぼうそう)、流行性耳下腺炎 (おたふくかぜ)、ロタウイルス胃腸炎等があります。一方で、ワクチンが無い感染症としてノロウイルス感染症、手足口病(エンテロウイルス71(EV71)を除く(注1))、ヘルパンギーナ(注2)、突発性発疹、伝染性紅斑 (りんご病)、咽頭結膜熱 (プール熱) 等があります。本稿では、近年隔年で大規模な流行が発生している手足口病について説明します。

手足口病とは
 手足口病は、ウイルス感染に起因する手・足・口内に発疹を起こす疾患です。感染症法(注3)では、5類感染症の小児科定点把握疾患に分類され、全国約3,000箇所の小児科定点医療機関で患者の発生動向が調査されています。大阪府内では、2010〜2015年の6年間に77,146人の患者報告があり、2011年、2013年、2015年と隔年での流行が確認されました。手足口病患者の年齢は5歳以下が全患者の88.8%、特に1歳以下が37.2%を占めており、患者の発生は6〜8月に集中していました。
 手足口病の主要な原因ウイルスは、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属に属するEV71とコクサッキーウイルスA16 (CVA16)ですが、上記流行年に大阪市立環境科学研究所に搬入された手足口病の患者検体からは、それぞれ57.1% (12/21)、42.9% (3/7)、64.0% (16/25) の割合でコクサッキーウイルスA6 (CVA6) が検出されました。これまでヘルパンギーナの原因ウイルスとして知られてきたCVA6ですが、2008年にフィンランド、2010年に台湾、2011年に日本、2012年にタイ、2013年に中国においてCVA6による手足口病の流行が確認されています。

表 主なウイルス感染症と原因ウイルス


症状
 3〜5日程度の潜伏期間を経て発熱・咽頭痛が出現し、1〜2日後には手掌・足底・口内等に痛みを伴う水疱性発疹が生じますが7〜10日程度で自然に治癒します。近年の研究で、感染するウイルスのタイプにより臨床症状が異なることが明らかにされつつあります。EV71はCVA16よりも高頻度に脳炎や無菌性髄膜炎(注4)といった中枢神経症状を引き起こすことや、稀に死亡に至る症例も報告されています。一方でCVA6に起因する手足口病では、従来の症状に加え腕や脚にも水疱性の発疹が認められること、発症から1か月後に爪が脱落する爪甲脱落症が起こること等が報告されています。手足口病は、重症になることは少ないですが、EV71に感染した場合は重症化する可能性が高くなることを認識しておく必要があります。また、CVA6に起因する手足口病は、従来の手足口病と異なる症状が出現すると認識しておくことで、早期診断や感染拡大の防止に繋がると考えられます。

予防・対策
 中国ではEV71による手足口病予防に有効なワクチンの接種が始まっていますが、日本において手足口病予防に有効なワクチンは承認されていません。特にワクチンが接種出来ない感染症の流行防止には、個人の感染防御対策の徹底が重要です。手足口病を起こすウイルスの感染経路は、飛沫感染、水疱内容物・便中に排泄されたウイルスによる経口・接触感染等です。よって、手洗いの励行やタオル・遊具の使い分け、おむつ等の排泄物の取り扱いに注意する等が有効な対策です。近年2年に一度、手足口病の流行が起こっており、今後も大きな流行が起こる可能性があります。感染防止対策を徹底し手足口病の流行を防ぎましょう。



注1:
エンテロウイルス71型(EV71)不活化ワクチン(ヒト2倍体細胞ワクチン):2015年12月、中国においてEV71による手足口病予防に有効なワクチンが承認されました。
注2:
発熱と口腔粘膜に出現する水疱性発疹を特徴とし、夏期に流行する小児の急性ウイルス性咽頭炎。
注3:
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律。
注4:
発熱、頭痛、嘔吐の3主徴、後部硬直などの髄膜刺激徴候の存在、髄液一般検査での典型的な所見が認められ、髄液の塗抹、細菌培養で細菌を検出しないことにより診断される症候群。


感染症部ウイルス課 上林大起
大阪市立環境科学研究所 (併任)