ウイルス性肝炎 - A型肝炎とその予防 -

炎という病気は、感染や薬物中毒などの何らかの原因により肝機能に異常を認めたときに使われる用語で、原因の一つに肝炎ウイルスがあります。主な肝炎ウイルスとして、A型〜E型の併せて5種類がありますが、各々のウイルスは性状や感染経路が大きく異なっています。その中で冬から春にかけて流行がみられ、注意したいウイルス性肝炎がA型肝炎です。

1.A型肝炎の特徴

 A型肝炎は、その名の通りA型肝炎ウイルス(HAV)が口から体内に侵入してくることから始まります。ウイルスは腸管を経て最終的に肝臓にたどり着き、そこで増殖した後、胆汁とともに再び腸管へ移行して糞便とともに排泄されます。このころ感染者はかぜ様の軽度な症状を示す程度ですが、ウイルスを排泄しているため、新たな感染源となります。その後、15〜40日の比較的長い潜伏期を経て黄疸が現れます。このとき肝機能障害の程度を表す肝GPTやGOTの値が急激に上昇します。また、この時期にHAVに対する抗体(IgM)が検出されるようになります。したがって肝炎が治ったか否かは肝機能の検査データが正常に戻ったことで判定されます。糖尿病などの基礎疾患を有する人や高齢者は、時には黄疸症状が長引いたり、腎臓、脳にも異常が現われてくるなど、重症になりやすいので注意が必要です。A型肝炎には以下のような特徴がみられます。

・小児の症状は不顕性かまたは軽症であるのに対して、成人では重症化する傾向がある。

・ウイルスの感染から発病まで長い潜伏期間があるため、感染に気づかないままに感染者の便中にウイルスが排泄される結果、家族内感染がおこりやすい。

・予後は概ね良好だが、完治するまでに1ヵ月程度を要する。

2.日本、世界での発生

 日本、米国、西欧、豪州ではA型肝炎の発生はあまり多くないのですが、世界的にみると多くの国々がA型肝炎の常在国となっています。図1に日本でのA型肝炎に対する抗体の保有調査の結果を示します。

1994年のグラフをみると、40歳未満の抗体保有率はその年代のうちのわずか1%以下に過ぎません。これを1973年と比較してみると、20年の間にグラフ全体が高齢者側に平行移動している事がわかります。これは、ここ20年間に感染の機会がほとんど無くなったことを意味すると同時に、A型肝炎の感染を受け、発症し重症化する人が増えている事を示唆しています。実際に欧米のみならず我が国においても、ウイルスに汚染された食品を媒介とした成人の集団発生がしばしば報告されています。

3.治 療

 特別な治療法はなく、ガンマグロブリン (γ-glb.) の投与および安静加療が行われます。この時の安静が不十分であると回復までに長期間を要する場合もあります。一方、感染者の減少から、有効なγ-glb.の入手が最近では困難になってきています。

4.検査法

 A型肝炎の検査には、感染者の便中のウイルスや血液中のIgMウイルス抗体の検出を行いますが、最近、当所では便中に含まれるウイルスの核酸を鋭敏に捕えることができる遺伝子検査法 (特にPCR法) を用いて、早期発見に努めています。

5.予防対策

 発生を防ぐ最も有効な手段は、A型肝炎ワクチンの接種を受けることです。国産ワクチンは副作用が少なく、抗体の獲得が確実な製品といわれています。最近、海外で生水や非加熱食品の飲食によってA型肝炎ウイルスに感染して帰国するケースが目立ってきています。海外に出かける際にはワクチンを接種し、積極的に予防することをお勧めします。

   ワクチンを希望される方は、下記の機関で受けることができます。
     『大阪府医師会予防接種センター ・06-6768-1486』
     『大阪市立総合医療センター   ・06-6929-1221』

ウイルス課 左近 直美