平成7年度報告

 

 昨年度の研究において、地方衛生研究所の主要機能と組織、人事交流、研究評価及び保健所との共同研究等について現状と問題点を明らかにした。これを踏まえ、本年度は、より具体的なあり方を探るために全国衛研調査並びに班員の所属する9自治体の保健所を対象に調査を行い、地域保健法を受けた将来構想または再編計画の実施状況、地域保健体系の再編成の状況、検討協議会、保健所との共同研究、衛研の機能(企画調整、情報、疫学、地域保健の4部門)について、現状・問題点・あり方等を以下に要約した。

 全国調査では73衛研全てから回答を得た。9自治体の202保健所の調査では、175保健所から回答(87%)を得た。以下に結果を要約した。

 

1.将来構想、再編整備等について

 将来構想計画や再編整備計画の検討状況を調査したところ、所内または本庁・保健所等を含む組織で検討中あるいは検討したと回答した衛研が73中57(78%)あり、近く検討予定と回答した衛研(8機関)を加えると約9割に達した。殆どの衛研が地域保健法を意識して再編計画を行っていた。

 

2.地域保健体系の再編成について

 各自治体における保健所を中心とする地域保健体系の再編整備計画に関する設問では、「検討会または委員会への参加」は、所の代表または専門委員として49衛研(67%)が参加しているものの、その中での「衛生研究所に関する検討状況」については、検討されている衛研は16(22%)で32(44%)の衛研が「検討されているが不十分」または「今後検討される予定」と回答した。

 

3.検討協議会について

1)基本的検討事項

 基本的検討事項として、以下の3点を掲げ、各々を推進するために必要な事柄を示し、これに対する意見を求めた。

 1.調査・研究の企画及び調整

  a.地域保健に関する調査・研究に係る基本方策及び実施に向けての関連機関の分担

  b.基本方策に基づく調査・研究の企画調整、予算調整、実施調整

  c.成果の評価及び利活用・提供

 2.地域保健関係者に対する研修

 a.研修の基本方策及び実施に向けての関連機関の役割分担

 b.基本方策に基づくカリキュラムの作成、企画調整、予算調整、実施調整

c.研修成果の評価

 3.情報ネットワーク

 a.情報の収集・解析・評価・提供に関する基本方策および関連機関の役割分担

 b.基本方策に基づく情報連携の企画調整、ハード・ソフト整備に関する企画調整

 c.情報公開に関する規定の検討

 d.実施・運用に関する調整及び効果の評価

 その結果、これらの必要事項に対し、本庁との連携、行政ニーズの把握、国の方策との整合性、国庫補助制度の必要性他府県との連携、人員及び施設整備等の体制づくり等が重要であるという意見があり、また具体策の提案もみられたが、大半の地研の意見は本研究班の示した上記の検討事項に賛同するものであった。

 

2)検討協議会の構成メンバーについて

 本庁・衛研・保健所を中心とし、さらに他の関連機関や外部有識者も必要と考える衛研が殆どを占めた。また一部に、検討課題に係わるメンバーのみの開催を可能にすること、あるいは外部有識者のオブザーバーとしての参加が適切、下部組織である実務担当部会は衛研が中心となるべきなどの意見がみられた。

 

3)検討協議会の設置に向けての基盤・条件整備

 必要事項として、以下の3点を掲げ、これに対する意見を求めた。

 1.既設の委員会等との機能的位置づけ

 2.地域保健に関する調査・研究を担当する本庁主管課の設置

 3.設置要綱の策定及び運営予算の確保その結果、実務担当部会の要領策定の必要性、部 局を越えた横断的組織とすること、全国共通性の必要性等の意見がみられたが、概ね3点の必要事項に賛同する意見が多数を占めた。

 

4)検討協議会の設置後、有効に機能するための条件整備

 必要事項として以下の項目を掲げ、意見を求めた。

 1.衛生行政施策及び業務としての認知

 2.予算確保に関する具体策

 3.保健所・衛研の企画調整及び疫学調査機能の強化

 4.意見や情報交換手段としての情報ネットワークの構築

 主な意見として、厚生省の協力、本庁に事務局の設置、人員確保、国庫補助制度の必要性などがみられたが、大半が上記事項の必要性に賛同する回答であった。

 

5)検討協議会の名称

以下の様な名称の提案があった。

1.地域保健調査研究検討協議会

2.  〃  対策検討協議会

3.  〃  調査研究協議会

4.地域保健調整検討協議会

5.  対策会議

 

6)検討協議会の全体を通じての意見

 設置に際する各府県市での問題点や取り組み方策などを詳細に把握することができた。また、一部の規模の比較的小さい県市の衛研では、設置が難しいという意見があったが、殆どの衛研では設置に向けて積極的に取り組むみたい意向がみられた。

 

7)検討協議会の設置に関する意向の追加調査

 検討協議会の設置に関しては、衛研の意見としては「早急に設置すべき」(46%)、「設置する必要があるが早急にすることはない」(33%)と、ほとんどが設置の必要性を認めており、その運営については、「有効に機能するように積極的に推進すべき」(77%)とする意見が多かった。同じ設問に対する保健所の意見もほぼ同様の傾向であった。

 

4.衛生研究所と保健所との共同研究について

 両者の間の共同研究について、その状況、問題点、共同研究の可能性ある分野衛研に対する要望をきいた。

1)これまでの共同研究について

 行ってこなかったが衛研21%、保健所50%であり、共同研究が低調であることを含めると両者とも80%をこえた。共同研究の阻害要因としては、共通的に、話し合う機会がない、積極性の不足、時間的余裕がない等が多く、保健所独自の回答として、組織として調査研究ができる体制になっていないが多数を占めた。また、これらの阻害要因が解決された場合の方針は、簡単に解決するとは思えないができる限り活性化に取り組みたいや、努力して取り組みたいが多かったが、積極的に取り組みたいは、特に保健所では少数に留まった。これらの結果は、これまでの経過や、将来の保健所機能などがまだ具体的でないなどの状況を反映したものと思われる。

 

2)共同研究の可能性のある分野

 細菌、ウィルス、食品微生物、食品化学、環境保健、疫学、水質汚濁などが両者とも多く、また衛研として今後対人関係を中心に積極的な取り組みが必要な分野としては、保健医療情報、精度管理、地域保健・地域医療、保健教育などが共通にあげられた。また、衛研への要望としては情報収集・解析・提供や検討協議会など話し合う場の設立などがあった。

 

3)保健所の調査研究分野

 今後積極的な取り組みを必要としているもの広範にわたったが、特に保健医療情報、エイズ、食中毒、精神保健、在宅ケアシステム、地域保健医療計画、結核、精度管理などが多かった。この中でエイズ、保健医療情報システム、精度管理、食中毒、輸入食品、飲料水等は衛研と共同で行うのが望ましいとされた。

 

5.衛研の機能について

 衛研の主要機能である「企画調整部門」、「情報部門」、「疫学部門」及び「地域保健(健康)部門」について、現状と今後のあり方に関する設問を行った。

 これら4部門の設置に向けての必要条件、設置していない場合の問題点、あるいは設置している場合の問題点の提示には、いずれも共通性がみられ、次の回答が主であった。

1)人員の確保及び人材の養成

2)業務の明確化

3)研究職(技術職)のローテーションと処遇

4)財政的基盤

 なお、企画調整部門では「調整権限」を問題点とする衛研が数多くみられた。

 次に、これらの4部門の設置状況と中心的業務をまとめると、

 

1)企画調整部門

既に設置している衛研は、県で17(37%)、市で2(8%)であった。一方、設置計画があるまたは設置したいと回答した衛研は、県で24(92%)、市で11(48%)と殆どの衛研が企画調整部門の設置を希望していた。

主たる業務は、以下の通りであった。

 1.調査研究の企画・運営に関する調整及び管理

2.他機関との調査研究の連携に関する企画調整

3.行政ニーズの把握

4.研修・見学の企画調整

 

2)情報部門

 既に設置している衛研は県で23(51%)、市で10(42%)であった。一方、設置計画があるまたは設置したいと回答した衛研は、県で17(71%)市で11(69%)で大半の衛研が設置を希望していた。

主たる業務は、以下の通りであった。

1.所内外の情報ネットワーク

2.情報関連機器の運営管理  

3.情報の集積・解析・加工・提供

4.保健所とのネットワークシステムによる情報収集・提供

 

3)疫学部門

 既に設置している衛研は県で12(26%)、市で3(12%)であった。一方、設置計画があるまたは設置したいと回答した衛研は、県で20(67%)市で6(27%)であった。

主たる業務は、以下の通りであった。

1.所保健所と共同の疫学研究

2.情公衆衛生統計情報の解析・提供

3.情他部門と共同による疫学的研究の企画実施

4.保自の疫学的研究の実施

 

4)地域保健部門

 既に設置している衛研は、県の2ヶ所(4%)のみであった。一方、設置したいと回答した衛研は、県で18(40%)市で4(15%)であった。

主たる業務は、以下の通りであった。

1.健康保持・増進に関する調査研究

2.健康事象に関する疫学的調査研究

3.地域保健の評価に関する研究

4.地域保健の情報に関する調査研究

 

6.総括

 地域保健体制再編の中で、各衛研とも将来のあり方について検討を行っているが、各自治体の中での位置づけについては、未だ検討不十分と考えられた。また、保健所との共同研究についてはこれまでは不十分であったが、今後は前向きに取り組みたいと考えている衛研、保健所の多いことが知られた。

 積極的な共同研究が求められる調査研究については、特に対人分野で、保健医療情報、精度管理、地域保健、エイズ、疫学などがあげられており、今後の共同研究の方向性を示唆するものである。

 また今後、地域の中で調査研究、検査、研修、情報発信を進めていくためには、本庁や保健所との情報機能や検討協議会の設置とともに、衛研側としても企画調整、情報、疫学等の部門の強化が必要と考えられた。

 

7年度トップへ