8年度研究成果

 

1.衛生研究所と保健所との連携の過去の事例

73衛研中57衛研から323事例の回答があり、解析した結果を以下に要約した。

1)過去の連携事例(連携事例集参照)

@連携機関

 過去に実施してきた連携事例をみると、対物関連分野を中心に衛研・保健所の2機関が単年度で実施したとする回答が多かった。分野別件数が多かったのは、食品微生物55件、食品化学26件、細菌23件、水質汚濁21件、保健所・衛生行政20件、ウイルス19件などであった。

A実施の動機および予算

 日常業務遂行上の必要性等から生じたもので、経費は予算措置がないか、あるいは本庁、衛研の単独費で、予算額は50万円未満の回答が多かった。

B実施にあたっての苦心点

   ・各機関との調整 136 件   ・予算の裏付けがなかった 47 件

   ・人員の確保    70 件   ・予算額の不足      44 件

   ・調査期間の確保  69 件   ・本庁等の理解      17 件

C企画調整および成果報告

 実施にあたって、各機関で企画段階での調整を行っており、調査結果は学会、会議等で報告する一方、関係機関に還元し、行政効果を認めていた。

2)連携のための留意点

@検討会の設置

 衛生研究所と保健所との連携を強めるためには、意志疎通を密接にし、共通認識を持つなど相互理解を深める検討会の設置を提案する回答が多かった。この検討会は、企画の段階から結果の活用までを協議する場であり、予算措置を可能にするシステムであるべきなどの意見があった。

A情報ネットワークの構築

 事業化に当たっては行政と地域住民のニーズを把握し、情報を収集できるネットワークなどの基盤整備を必要とする意見が多くみられた。

 

2.将来構想について

1)地域保健法を受けた平成7年度以降の将来構想の検討状況

@都道府県の衛研:45のうち36(80%)が「検討した」または「検討中」

A指定都市等の衛研:25のうち18(72%)が「検討した」または「検討中」

B各自治体の認知:・自治体は未認知だが本庁主管部局と検討(22衛研)

         ・所内検討委員会において検討     (13衛研)

          ・地域保健推進協議会等において検討   (10衛研)

Cまとめ:殆どの衛研では自治体の認知までは至っておらず、本庁主管部と連携して検討中か所内の検討委員会等による段階で検討している状況である。

 

2)全面的な機構・組織改革について

 大幅な改革や名称変更、あるいは衛研と環境研の統合計画のある衛研

   ・都道府県 6 衛研  ・指定都市 3 衛研  ・他の市 0 衛研

 

3)地方衛生研究所の行政的な位置づけについての検討状況

 新地域保健体系の中での衛研の行政的位置づけについての検討状況

   ・充分検討された   8 衛研

   ・検討されていない 25 衛研

   ・検討されたが不十分 36 衛研

 

4)組織の再編成等について

@衛研の各部門の新設計画、再編成、強化部門等の計画・構想等の調査

   ・部門の新設の計画・構想はない 33 衛研

   ・部門の再編計画の構想がある 48 衛研

A構想・計画中の新設部門

   ・情報部門  29 衛研 ・疫学部門  13 衛研

   ・企画調整部門  22 衛研 ・地域保健部門  10 衛研

B新設済み部門 衛研(企画調整部門、情報部門、疫学部門を設置)

 

5)将来構想において重点的に検討した項目・機能

 以下の@試験検査〜G検討協議会の8項目に関し、特に重要視して検討したこと、あるいは検討中と回答した具体的内容の出現頻度の高い事項を掲げた。

@試験検査

   ・保健所の精度管理

   ・保健所との分担

   ・GLPへの対応

   ・レファレンスセンター機能

A新たな調査研究の展開

   ・健康事象に関する疫学的調査研究

   ・公衆衛生検査情報に関する調査研究

   ・アレルギー疾患の予防に関する研究

   ・健康保持増進に関する研究

   ・環境有害物質に関する研究

B調査研究事業成果の評価

   現状:大多数の衛研が所内での評価システムによっている。

      当該管理職以外による評価組織を20衛研で設置している。

   今後:外部有識者等による評価システムが必要と過半数の衛研が回答した。

C研修・指導

 研修・指導の対象としては、保健所職員と市町村職員を掲げる衛研が多かった。カリキュラムの作成、財政的基盤、専門の設備の配置が検討され、専任職員の配置については今後検討が必要としているところが多かった。また、民間機関に対する研修指導も今後の検討課題としている。

D情報機能

   ・国・国研・衛研間のネットワーク

   ・専任職員の配置

   ・本庁・保健所とのネットワーク

   ・インターネットへの参入

E危機管理(O-157等の事件対応)

   ・マニュアル作成 ・研修

   ・設備・備品等の整備 ・組織整備

F他機関との連携(共同研究など)

   ・国の研究機関との連携  ・他の衛研との連携

   ・保健所との連携 ・大学との連携

G検討協議会

   ・調査研究の企画調整 ・研修の企画調整

   ・情報活動の企画調整

 

3.人事交流及び職員の研修(73衛研のうち71衛研が回答)

1)人事交流について

@研究所の専門職の職種

   ・医療職と研究職             18 衛研  25 %

   ・研究職のみ               25 衛研  35 %

   ・医療職と行政職              9 衛研  13 %

   ・行政職のみ               10 衛研  14 %

A研究所・行政(本庁)・保健所等の間での人事異動

   ・頻繁にある(毎年)           39 衛研  55 %

   ・時々ある(2〜3年毎)          17 衛研  24 %

   ・めったにない(数年毎)          7 衛研  10 %

   ・通常はない                6 衛研   9 %

B研究所・行政(本庁)・保健所等の間での人事異動における職種の変更

   人事異動があると回答した64衛研の職種変更(1衛研は無回答)

   ・職種変更がある機関             35 衛研

   ・職種変更がない機関             28 衛研

C行政・保健所・衛研等の間での人事交流に対する考え方

   賛成の主な理由

   ・広い識見が得られ何れの職場でも有効となる  44 衛研  63 %

   ・マンネリ化が解消され活性化につながる    44 衛研  63 %

   ・新たな視点での事業展開が可能になる     36 衛研  51 %

   ・適材適所となり個々の能力をフルに活かせる  36 衛研  51 %

   ・事業の連携が容易になる           25 衛研  36 %

   反対の主な理由

   ・専門性や研究水準の低下をまねく       53 衛研  88 %

   ・研究の引継ぎが困難             32 衛研  53 %

   ・望まない異動は志気の低下をまねく      28 衛研  47 %

   ・調査研究の継続に支障をきたす        27 衛研  45 %

結局のところ賛成か反対か

   ・賛成である                  20 衛研  28 %

   ・条件付き賛成である              50 衛研  70 %

   ・反対である                  0 衛研  0 %

D所内における人事異動・交流に対する考え方

   賛成の主な理由

   ・マンネリ化が解消され活性化につながる    41 衛研  59 %

   ・新たな視点での事業展開が可能になる     39 衛研  57 %

   ・適材適所となり個々の能力をフルに活かせる  35 衛研  51 %

   ・事業の連携が容易になる           17 衛研  25 %

   反対の主な理由

   ・望まない異動は志気の低下をまねく      27 衛研  59 %

   ・研究水準の低下をまねく            24 衛研  52 %

   ・調査研究の継続に支障をきたす        20 衛研  44 %

結局のところ賛成か反対か

   ・賛成である                  30 衛研  42 %

   ・条件付き賛成である              37 衛研  52 %

   ・反対である                   3 衛研  4 %

E人事交流のあるべき姿について

   ・所外との人事交流に賛成、所内の人事異動・交流に賛成   9 衛研

   ・所外との人事交流に賛成、所内の場合は条件付き賛成    3 衛研

   ・所外との人事交流に条件付き賛成、所内は賛成      10 衛研

   ・所外、所内ともに条件付き賛成             28 衛研

   ・所外は条件付き賛成、所内の人事異動・交流に反対     2 衛研

 

2)職員研修の現状

  @長期海外研修制度がある                   6 衛研 9 %

  A短期海外研修制度がある                  19 衛研 27 %

  B国内の他機関(大学等)への研修制度がある          34 衛研 48 %

  C行政が実施する職員研修制度がある             61 衛研 85 %

  D研究者対象の研修を自治体内で行っている           8 衛研 11 %

  E所内での研修を行っている                 40 衛研 56 %

 

4.提 言

 衛生研究所の役割と保健所との連携のあり方について、これまでの研究成果をふまえて以下の内容の提言を作成した。

地方衛生研究所の持つべき機能と組織

 1)調査研究   3)研修指導

 2)試験検査   4)公衆衛生情報等の収集・解析・提供

今後強化すべき機能と体制

1)対人関連分野の調査研究の強化

 2)精度管理・レファレンス活動の推進

 3)情報関連機能の充実強化

4)調査研究等の企画調整と組織の強化

5)危機管理の観点からの体制づくり

保健所等との連携 

1)保健所との共同事業  2)検討協議会

 

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