小規模事業所における労働衛生管理の推進に関する調査研究

1998年度中間報告書(概要)

大阪府立公衆衛生研究所労働衛生部


 

目 次

T.目的

U.対象と方法

V.結果

  1. 解析対象事業所の属性
  2. 回答者の属性
  3. 労働衛生管理を推進する上での障害
  4. 地域保健産業センターについて
  5. インターネットの導入
  6. 労働者の健康状態
  7. 負担・有害作業の管理

    1. パソコン・ワープロ作業
    2. 重量物取り扱い作業
    3. 不自然な姿勢と長時間の立ち作業
    4. 手・腕・肩に大きな負担のかかる作業
    5. 騒音作業
    6. 有害物取り扱い作業
    7. 有害・負担作業の管理に関する考察

 

 

T.目 的

 

労働衛生管理が不十分な50人未満事業所(小規模事業所)において、労働衛生管理の障害、地域産業保健センター利用の希望、労働者の健康状態、情報入手の手段としてのインターネットの導入、有害負担作業への対策実施の実態などを把握し、労働衛生管理を推進する上での資料とする。

 

 

U.対象と方法

 

1.対象:1996年の悉皆調査の対象 765事業所を対象とした。

2.方法:

    1)質問紙の作成

     当所において質問紙の原案をつくり、八尾地区勤労者健康管理推進協議会の協力と了解のもとに当所との連名により質問紙を作成した。

    2)質問紙の配布と回収

     訓練された調査員(当所所員及び派遣社員)が、上記の対象事業所を訪問して調査をおこなった。

    3)調査時期

       調査票配布及び回収 1998年11月10日〜27日

    4)調査内容

     事業所の業種・従業員の人数などの属性、労働衛生管理活動実施における障害、地域産業保健センターへの認識、インターネットの導入状況、労働者の健康状態、有害負担作業の有無と対策の実施状況を、質問紙を用いて調査した。

    5)調査結果の統計解析

       主として、事業所の規模別および産業大分類による主な業種別に分類して解析した。

 

 

V.結 果

 

1.解析対象事業所の属性

 556事業所から質問紙を回収した。被雇用者が50人以上であった5事業所を除いて、551事業所を対象として解析をおこなった。転・廃業および移転を除いた質問紙の回収率は76.7%であった。今回の回答事業所の構成割合を表1および図1に示す。規模別では1〜4人事業所が33.2%で1996年の前回調査に比べ14.5ポイント減少し、5〜9・10〜19人事業所が各々32.3%、22.9%で6ポイント前後増加し、20〜29・30〜49人事業所が各々6.5%、5.1%で1ポイント前後の増減に留まった。業種別では主な産業大分類の建設業、製造業、卸小売飲食業、サービス業の4業種において2ポイント前後の増減があった。

 被雇用労働者数は、1事業所当たりの平均および標準偏差は9.57±8.89人(範囲1-47人)であり、中央値7人、合計5272人であった。

表1. 回答事業所の規模・業種の構成( %は551事業所に占める割合)

1〜4人

5〜9人

10〜19人

20〜29人

30〜49人

合計

建設

12

2.2%

15

2.7%

16

2.9%

1

0.2%

3

0.5%

47

8.5%

製造

80

14.5%

75

13.6%

61

11.1%

23

4.2%

16

2.9%

255

46.3%

電気ガス水道

0

0.0%

5

0.9%

3

0.5%

5

0.9%

1

0.2%

14

2.5%

卸小売飲食

36

6.5%

46

8.3%

27

4.9%

3

0.5%

5

0.9%

117

21.2%

不動産

7

1.3%

4

0.7%

1

0.2%

1

0.2%

0

0.0%

13

2.4%

サービス

48

8.7%

33

6.0%

18

3.3%

3

0.5%

3

0.5%

105

19.1%

合計

183

33.2%

178

32.3%

126

22.9%

36

6.5%

28

5.1%

551

100%

 

2.回答者の属性

 質問紙に回答した人物が誰であるかは回答の質や性格を評価するのに必要である。回答者の属性を図1に示す。回答者は経営者56.4%、経営者家族10.3%であり、合わせて66.7%が経営者とその家族であり、規模が小さいほど経営者の割合が高かった。

 

3.労働衛生管理を推進する上での障害

「従業員の健康を維持・増進する活動の障害と考えられること」として1位から4位まで挙げた項目を、4個の複数選択として集計した。その結果を図2に示す。

 「従業員の健康を維持・増進する活動の障害と考えられること」としては「時間がない」が最多(47.4%)で、次いで「財政的な余裕がない」(43.2%)、「人を配置する人員の余裕がない」(41.9%)、「その仕事をする適当な人がいない」(31.6%)、「自分たちに適した方法がわからない」(30.5%)、「健康を維持・増進する活動に関する情報が不足している」(30.3%)であった。「時間がない」は前回調査時にも労働衛生管理を実施しない理由として挙げられたことである。回答者の多くが経営者および家族であることから「経営者の時間がない」と考えられる。小規模事業所にとって「カネ」、「ヒト」の根源的な問題のほうが障害として認識されていると考えられる。

 規模により若干の違いがあり、1〜19人事業所では時間>財政>人員であったが、20〜29人事業所では財政>人材>人員であり、30〜49人事業所では人員>財政>方法であった。

   

 

4.地域保健産業センターについて

1996年の調査に続き、地域産業保健センターの知名度について再び調査をおこない、地域センターの窓口相談と個別訪問による保健指導について、そのニーズ並びにそれを必要としない理由を調べた。

4-1 知名度 

 「地域産業保健センターを御存じですか」という設問に「はい」と回答した事業所は92事業所16.5%であり、前回の63事業所8.2%に比べて、29事業所8.3ポイント増加した。サービス業以外の業種における知っている割合が増加したことによる。

4-2 窓口における相談の希望

「地域産業保健センターに相談したいと思いますか」という設問に「はい」と答えた事業所は、いずれの規模においても10%前後であり、業種別ではサービス業が16.2%とやや高い割合を示した。

 同じ質問に「いいえ」と回答した469事業所における、「いいえ」の理由は「相談したい問題がない」(55.7%)が最も多く、次いで「何をしている所かよくわからない」(52.7%)、「窓口を訪れる時間がない」(51.6%)、「手間が面倒である」(35.6%)であった。はじめの3項はいずれの規模・業種においても共通して多かった。

4-3 訪問指導の希望

 地域産業保健センターの「個別訪問により保健指導して欲しいと思いますか」という設問に「はい」と答えた事業所は、30〜49人事業所では21.0%であるのに比して1〜4人事業所では7.7%であり、5〜9・10〜19・20〜29人事業所は11%台で同程度であった。

 同じ質問にに「いいえ」と答えた472事業所における理由は、「来てもらうほどの問題がない」(77.8%)が際だって多く、次いで「応対する時間がない」(42.8%)、「応対が面倒である」(30.9%)であった。規模・業種による目立った違いは見られなかった。

 以上から、地域産業保健センターの活動に対するニーズはある程度あるものの、決して多くはないこと、その根底には「問題がない」という認識があることが判明した。

 

5.インターネットの導入

 インターネットによる労働衛生管理活動に関する情報提供の実現可能性を把握する目的で、小規模事業所におけるインターネットの導入状況の調査をおこなった。その結果を図3に示す。

 インターネットの導入を「既に実施」は全体で10.5%、「今後実施予定」は11.8%であった。「既に実施」は10〜19人事業所では15.1%、20〜29人事業所では16.7%であるが、1〜4人事業所では7.1%と低かった。業種別ではサービス業で「既に実施」が16.2%と高かったが、卸小売飲食業ではその割合が7.7%と低かった。「今後実施予定」では規模が大きいほどその割合は高く、業種別では目立った差はなかった。

 「既に実施」と「今後実施予定」とを併せると全体では22.3%になり、規模が大きいほどその割合は高かった。

   

 

6.労働者の健康状態

 今回の調査においては、過去3年間の通院・入院・病気退職・在職死亡を指標として健康状態を把握しようと試みた。健康状態の指標とした4項目の信頼性は、通院<入院<病気退職<在職死亡の順で高くなると考えられる。

6-1 通院

 「病気で3ヶ月以上通院していた従業員」がいた事業所は全体で8.7%で、規模が大きいほどその割合が高かった。通院者の人数が記載されていた事業所における通院した労働者は71名であったが、記憶に残りやすい「3ヶ月以上通院」を調査した結果、慢性疾患が回答の対象となったと考えられる。

6-2 入院

 「病気で入院した、または現在入院している従業員」がいた事業所は全体で10.0%であるが、20〜29人事業所では38.9%と高かった。入院者の人数の記載がなされていた事業所における入院した労働者は62人であった。

6-3 病気退職

 「病気で退職した従業員」がいた事業所は全体で3.1%であるが、30〜49人事業所では10.7%とやや高かった。病気退職者の人数が記載された事業所における病気退職した労働者は17人であった。

6-4 在職死亡

 「病気で在職中に亡くなった従業員」がいた事業所は全体で3.6%であるが、20〜29人事業所(8.3%)30〜49人事業所(7.1%)ではやや高かった。死亡者の人数の記載がなされていた事業所における在職死亡した労働者は20名であった。

 

7.負担・有害作業の管理

 

7-1.パワコン・ワープロ作業

パソコン・ワープロ作業があると答えた事業所は全体で56.4%であった。従業員が1〜4人の事業所では36.6%、5〜9人では56.7%、10〜19人では70.6%、20〜29人では80.6%、30〜49人では89.3%となっており、規模が大きいほどパソコン・ワープロ作業のある割合が高いかった(図7-1-1)。
 業種別には、電気・ガス・水道業で85.7%ともっとも多く、次いで不動産69.2%、建設業63.8%、サービス業62.9%であり、製造業および卸・小売・飲食業はいずれも50%程度であった(図7-1-2)。

対策の実施状況は、「座り心地の良い椅子」「キーボードの高さ」「ディスプレイの高さ」「グレアのない配置」などのハード的な対策の実施率は75%を超えている。それに対して、ソフト的対策と言える「連続作業時間の指導」の実施率は60%程度と低い(図7-1-3)。

 規模別に見ると、ハード的対策の実施率には大きな差はないが、前3者については、規模が小さいと実施率が低い傾向が見られた。また、「実施困難」はいずれも規模が小さいほど高かった。「連続作業時間の指導」の実施率は明確な傾向は見られず、10〜29人事業所で低かった。

 業種別に見ると、「座り心地の良い椅子」「キーボードの高さ」「ディスプレイの高さ」については、電気・ガス・水道業でもっとも高く、サービス業で低かった。「連続作業時間の指導」については、建設業では40.0%ともっとも低く、次いでサービス業の54.5%であり、他の業種ではいずれも60%台であった。

 

 以上のように、対策によっては「実施済み」の割合がかなり高かった。ただし、実施している程度には様々あると考えられ、対策としては不十分なものも含まれている可能性がある。したがって、今回の調査結果の判断には一定の配慮が必要である。この点は、以下の項目(7-2〜7-6)でも同様である。

 

7-2.重量物取扱い作業

 重量物取扱い作業があると答えた事業所は、全体として59.3%であった。従業員が1〜4人の事業所では49.2%、5〜9人事業所では57.9%、10〜19人事業所では67.5%、20〜29人事業所では75.0%、30〜49人事業所では78.6%となっており、規模が大きいほど重量物取扱い作業のある割合が高かった(図7-2-1)。
 業種別には、電気・ガス・水道業で85.7%ともっとも高く、次いで製造業が77.3%、建設業および、卸・小売・飲食業で50%台、サービス業が23.8%と低く、不動産業では7.7%と特に低かった(図7-2-2)。


 重量物対策の実施状況では、既製品がある「手押し車やフォークリフト」の使用は8割を超えているが、重量物自体の改善が必要な「軽量化」および「持ちやすくする」の実施率は半分程度と低かった。また、作業方法の改善である「積み上げ高さ」および「持ち上げ方の訓練」の実施率は7割程度であった(図7-2-3>)。

 規模別の実施率に明確な傾向があるのは、「持ちやすくする」であり、規模が小さいほど実施率が低かった。

 業種別の実施率では、「軽量化」はサービス業で高く、電気・ガス・水道業で低かったが、その他の対策はいずれも、電気・ガス・水道業で高く、逆にサービス業で低かった

 

7-3.不自然な姿勢と長時間の立ち作業

 不自然な姿勢や長時間の立ち作業がある事業所比率は全体の55%である。規模別では、5人未満規模および5〜9人規模では50%前後であるが、10人規模以上では60数%と若干多くなる。業種別では、図7-3-1に示すように、製造業が最も多く66.3%、以下、卸・小売・飲食業と建設業が50%前後、サービス業と電気・ガス・水道業が40%強で、不動産業が少なく7.7%である。
各種対策の実施比率を図7-3-2に示す。ハード面・ソフト面での対策をみると、「疲れた時に自発的休憩がとれる」の実施率は74.7%と高い。「作業面の高さの適切化」「立ち作業のための休憩用椅子の設置」「腰のひねり動作の低減」もそれぞれ66.3、65.5、59.5%が実施されている。しかし、「連続立ち作業時間を一時間以内にする」の実施率は、わずか31.7%にすぎず、50.7%は実施困難と回答している。

 各種対策が実施困難と訴えた比率を業種別に示したのが図7-3-3である。製造業は「立ち作業を1時間以内に」を除いた他の対策の訴え率は他業種よりも低い。卸・小売・飲食業は「立ち作業を1時間以内に」「作業面の高さの適切化」「立ち作業用の休憩椅子の設置」で実施困難の訴えが多い。サービス業は「立ち作業を1時間以内に」「腰のひねり動作を減らす」「作業面の高さの適切化」で実施困難の訴えが多い。建設業は「立ち作業を1時間以内に」で実施困難を訴える比率が70%にも上り、また「立ち作業用の休憩椅子の設置」「作業面の高さの適切化」でも実施困難が非常に多い。

   

7-4.手・腕・肩に大きな負担のかかる作業

 手・腕・肩に大きな負担のかかる作業の有無を規模別、業種別にみた結果を図7-4-1、図7-4-2に示す。当該負担作業は全体の46.3%の事業所で行われている。規模別に当該作業がある比率をみると、5人未満規模を除くと、規模が大きいほど増加している。業種別では製造業56.9%、建設業57.4%が多く、卸・小売・飲食業、サービス業、電気・ガス・水道業は相対的に少なく、3〜4割である。不動産業では当該負担作業はなかった。

 各種対策の実施比率を図7-4-3に示す。工具・用具を握りやすくする改善は86.2%の事業所で実施されている。工具・用具の軽量化は78.0%、腕の力を軽減するための固定装置の使用は74.3%の事業所で採用されている。しかし、同一動作の頻繁な繰り返しを低減する対策は44.2%の事業所でしか実施されておらず、34.0%の事業所は実施困難と回答している。また、作業面の高さの適切化も51.0%の事業所が実施しているに過ぎず、28.2%の事業所は実施困難と回答している。工具・道具の握りやすさと軽量化以外の各対策は、規模が大きいほど進む傾向にある。

 各対策が実施困難と回答した比率を業種別にみたのが図7-4-4である。製造業は反復動作の低減、サービス業と卸・小売・飲食業は作業面の高さの適正化と反復動作の低減、建設業は工具・用具を握りやすくする以外のすべての対策で実施困難との訴えが多い。

   

7-5.騒音作業

 騒音作業があると回答した事業所は、全体で33.4%であった。従業員数が1〜4人事業所では29.5%、5〜9人事業所では28.7%、10〜19人事業所では42.1%、20〜29人事業所では41.7%、30〜49人事業所では39.3%となっており、10人以上の規模の事業所で騒音作業のある割合が高くなっていた(図7-5-1)。

業種別には、製造業と建設業が高く、それぞれ51.4%および42.6%であった。サービス業は18.1%、卸・小売・飲食業は12.0%で、電気・ガス・水道業および不動産業には騒音作業を有する事業所はなかった(図7-5-2)。

  

 騒音対策の状況は、全体でみると、半数の事業所が「低騒音タイプの機器の設置」を実施しており、機器購入に際して騒音対策を考慮していることが窺える。「機械と床の間に防振ゴムや防振バネをはさむ」、「天井や壁に吸音材を貼る」などの対策を講じている事業場も40%程度あったが、「騒音源の機械を防音材で囲む」については実施率は20.1%であった。「耳栓やイヤマフの支給」は22.3%と低率であったが、今後実施したいと考えている事業所が33.7%あった。「機械を防音材で囲む」については、対策が困難との回答が49.5%にみられ、その他の対策についても、実施困難との回答が、30%前後みられた(図7-5-3)。
 また、図7-5-3に示す5種類の対策すべてについて、事業所規模が大きいほど実施率が高い傾向がみられ、特に30〜49人事業所で、1〜29人事業所に比べて高い実施率を示した。

 業種別にみると、低騒音タイプの機械の設置の実施率は建設業が70.0%と高く、防振ゴムなどの設置は製造業が48.1%と他の業種に比べて高率であった。その他の対策については全体に低率であったが、建設業で比較的高い傾向がみられた。

 

7-6.有害物取り扱い作業

 

 有害物取扱い作業があると回答した事業所は、全体で13.2%であった。事業所規模による一定の傾向は見られないが、20〜29人事業所が最も高率で、27.8%であった(図7-6-1)。

 業種別には、電気・ガス・水道業および不動産業は有害物取り扱い作業はなく、サービス業が21.9%と最も高率で、次いで製造業が16.5%であった。卸・小売・飲食業および建設業は、それぞれ5.1%および4.3%と少数であった(図7-6-2)。

  

 対策の状況を全体でみると、従業員に物質名を知らせている事業所は87.7%、容器類へ物質名を記載している事業所も90.4%とほとんどの事業所で物質名が労働者にわかる状態となっている。しかし、物質名を従業員に知らせることや容器に記載することが困難とする事業所が数%であるが存在している。全体換気を設置している事業所は82.2%であったが、局所排気装置を設置している事業所は64.4%と少なかった。今後実施したいと考えている事業所が12.3%あった。防毒マスクなどの保護具を使用している事業所は79.5%であった(図7-6-3)。取扱物質や作業の状態が明らかでないが、これらの対策に対して実施困難とする事業所が、局所排気装置で9.6%、全体換気で5.5%、保護具で6.8%みられ、無回答がそれぞれ13.7%、8.2%、4.1%あった。

 

7-7.有害・負担作業の管理に関する考察

 

 パソコン・ワープロ作業、重量物取扱い作業や手・腕・肩に大きな負担がかかる作業に見られるように、設備・機械・工具などのハード的な改善対策は進んでいると考えられる。しかし、パソコン・ワープロ作業における連続作業時間の制限、連続立ち作業時間を一時間以内にする、騒音作業において作業性に影響を及ぼす「機械を防音材で囲む」など、ソフト的な改善は前述のハード的な改善対策に比べ進んでいないと考えられる。

 また、パソコン・ワープロ作業における「座り心地の良い椅子」「キーボードの高さ」「ディスプレイの高さ」「グレアのない配置」などのハード的対策や、手・腕・肩に大きな負担がかかる作業における「反復動作の低減」などソフト的対策に見られるように、規模が大きいほど対策が進んでいる傾向が見られ、財政的な基盤による違いが推測される。

 なお、有害・負担作業の改善状況については、僅かな対策を実施している場合や、対策としては不十分な場合などでも、「実施済み」と回答している可能性がある。例えば、有害物取扱作業においては、物質名の周知が約90%で為され、局所排気装置が64.4%に設置されている一方、79.5%で防毒マスクが使用されるなど矛盾した回答が得られた。これは、局所排気装置が一部にしか設置されていないが、回答としては「実施済み」となった結果と考えられる。

 また、回答者には経営者およびその家族が多いという回答者の属性が反映されて歪みが入り、「実施済み」が比較的高率の回答になった可能性があり、実際に有害負担作業に従事している労働者の感覚とは違いがある可能性も否定できない。これらから、今回の調査結果の解釈には慎重さが必要と考えられる。