<小規模事業所における総合的健康管理等の方策に関する提言>
T.必要な情報の提供と労働安全衛生教育を充実する


   調査結果から小規模事業所には、労働衛生管理に関する情報がきちんと入っていないことが理解される。今日の日本社会が情報社会であるといっても、小規模事業所における労働衛生管理に必要な情報は収集・提供されていない、と言うべきである。必要な情報を収集し、提供することは、小規模事業所における労働衛生管理の推進にとってきわめて重要である。
   また、小規模事業所の事業者と労働者に、労働安全衛生の重要性とそれによって得られる利益について理解を得て、労働安全衛生管理に対するより一層の取り組みを促し、自主的活動を支援するためにも、啓発、情報提供、相談、教育活動が重要である。
 これらの活動は、将来は民間活動として行えるよう環境を整えていくとしても,現段階では、主に行政および公的機関の責任で実施することが望ましい。また、効率的な実施のために、関連諸機関が連携して事業を企画・分担実施すると同時に、受け手側を組織化する必要もある。
啓発、提供情報、教育の内容と範囲については添付資料にその概要を示す。


1.啓発活動・情報提供の促進

1-1.
啓発用パンフレットおよびポスターの作成と配布
  小規模事業所向けの啓発用パンフレットやポスターを作成し、定期的に配布する。作成・配布にあたっては、関連機関間で役割を分担・調整し,相互に協力する。パンフレットやポスターには、詳細な情報の入手先、相談機関、インターネット上で提供される情報の発信元も記す。

1-2.
マスメディアによる啓発活動
  小規模事業所の事業者と労働者を対象として、テレビ、新聞、一般雑誌では健康づくりなど一般的な事項を、専門紙・業界紙では、有害化学物質や特定の業種に潜む危険性と予防対策などの事項について啓発を行う。

1-3.
定期的な講演会・研修会の企画・実施
  小規模事業所の事業者と労働者を対象とする。@基本的な労働衛生教育、A専門知識普及のための研修会・講習会、B資格取得のための学習会などの企画・実施を行う。これら講演会・研修会は定期的に実施する。講演会・研修会を無償または安価にとどめるための助成を行う。また、C講師養成の講習会・研修会も企画・実施する。

1-4.
インターネット上での啓発活動と情報提供
  インターネットを利用して、啓発情報とその詳細を無償提供する。インターネットは,今後,企業・家庭ともに急速な普及が見込まれ、その利用は、膨大な数にのぼる小規模事業所および労働者への効率的で迅速な情報伝達を可能にする。文字情報のみならず、画像、音声ほか、電子化された様々の情報の提供が可能であり、また、双方向性を活かして小規模事業所のニーズの吸い上げや、事業所からの発信も可能である。ただし、インターネットの活用のためには利用者側の能動的な参加と、労働衛生情報ネットワークの形成,および容易なアクセスのための案内情報が必要である。

2.相談体制の強化

2-1.
各機関の相談窓口の開設とその周知
  行政および公的機関、民間団体などは無料の相談窓口を開設し、その業務と連絡先を、各機関のパンフレットや広報誌、窓口を通じてPRする。同時にマスメディアやインターネットでもPRする。また、講習会・研修会の資料にも記載する。

2-2.
相談・情報提供の手段の多様化
  労働安全衛生に関わる機関による相談は、面談、訪問、電話、ファックス、電子メール、インターネットなど、多様な手段・ルートで行う。

2-3.
相談窓口間,および,相談窓口と専門機関間の情報連携
窓口で受ける相談は多様である。適切な処理ができるように各機関の体制を整えることに加え、不得意分野や専門外の相談に対しても、直ちに適切な機関を紹介できるように、窓口間、および、窓口と専門機関間の相互の情報連携を確立しておく。

3. 教育システムの強化・充実

3-1.
一般健康教育・基本的労働衛生教育の実施
  小規模事業所の事業者と労働者およびその家族を対象として、(1)健康と健康診断の大切さ、生活習慣病の予防、健康づくり、および、(2)基本的な労働衛生教育として、有害・負担作業の管理,パート労働者・下請け労働者の労働衛生管理,法令、事業主の責務,労働者の権利を内容とした講演会・講習会を定期および随時に企画・開催する。講演会・講習会は主に地域密着型で行う。受講しやすいように巡回講演とし、事業所またはその近隣で行う。勤務時間内にこだわらず、土曜日の午後や時間外(終業後)でも弾力的に実施する。また、小人数の受講者を対象とした企画を実施する。

3-2.
衛生管理者、衛生推進者、作業主任者育成のための教育・研修の強化
  労働基準協会・連合会など指定講習機関は、衛生管理者・(安全)衛生推進者、作業主任者を育て、その能力を向上させ、職場において健康管理、作業環境管理、作業管理を計画・実践できるようにするための教育・研修を、定期的に開催する。新技術への対応、能力維持と発揮のために定期的に再受講させる。カリキュラム終了者には一定の資格を付与し、処遇の改善を図り、権限と責任を強化する。受講事業所および受講者には、労働安全衛生促進の助成措置や受講料減免措置、各種予防給付措置などのメリットを与える。

3-3.
独習でき、資格取得できる教育システム
  衛生管理者、(安全)衛生推進者、作業主任者が、独習で資格を取得できるシステムをつくる。そのために、教材(教科書やビデオなど)を作成・提供すると同時に、試験制度を整える。独習者の情報入手手段としてインターネットも活用できるように、インターネット上にそれら情報を掲載する。