<小規模事業所における総合的健康管理等の方策に関する提言>
Z.一般健康管理を充実する


  一般健康管理においては、実施項目に地域保健の健康診断と共通項目があること、小規模事業所の地域密着型の特性を考慮すると、地域保健との関わりも考慮すべきである。しかし、八尾市における調査結果に見られるように、地域保健との関わりの程度は規模の大小によって差がある。一般健康管理においては、規模別の対応を考慮する必要がある。
  また、零細企業においては、一般健康管理と作業管理などとの実施主体が乖離するため、まとめて把握することが必要となり、前述の「W-5担当産業医」の設置により、それが可能となる


1.一般健康管理の動機づけ

  事業者・労働者ともに健康への関心は高いが、健康診断の実施率は事業所規模が小さいほど低い。事業者には労働者の健康管理責任があり、民間の健診機関が存在することや公的機関による巡回健診が実施されていることなどの情報を知らない事業者が多い。身体の異常を早期に発見し、治療や生活の改善を行うことが重要であり、生活習慣病をはじめとする一般疾病の予防には労働や日常生活の改善などの一次予防が重要である。これらについての啓発や情報提供などを強力に進めることが必要である。


2.健康管理の企画と実施

2-1. 主体は規模により異なる
  30〜49人事業所では、事業所自身が健診の企画を行っているところが60%程度にみられることから、事業所自身で企画運営・事後措置のコーディネートなど健康管理全般を衛生管理者などを担当者にして実施することは可能であろう。したがって、30人以上の事業所については事業所自身が企画・実施することを前提にした支援が必要である。
  30人未満の事業所では、地域産業保健センター、保健所、市町村保健センターなどの公的機関の指導・援助により、各事業所の規模や実情に応じた形態で実施すべきである。

2-2. 健康診断の企画
  零細な事業所では、事業所自身が健診を企画するのは困難な現状から、外部機関の関与が健診をおこなう原動力になる。したがって、一定規模以下の事業所においては、保健所・市町村保健センターなどの地域保健機関、商工会議所・商工会、政管健保など事業所外部の機関が企画・斡旋することが必要である。

2-3. 健康診断の実施
  健康診断を小規模事業所へ普及するには、安価で、事業所の近くで、短時間に済むことが必要条件である。
(1)事業所の近くで巡回集団健康診断、または医療機関での個別健康診断
  効率性と経済性を考慮すると、巡回集団健診が基本になる。しかし、30人未満事業所などでは、通常の健診機関が採算性のため個別の事業所に巡回して健診を実施することは困難なので、近くの集会所、公民館(企業団地では団地集会所が必要)あるいは最寄りの事業所などで幾つかの事業所を集めておこなうのが有効である。また、零細な事業所では医療機関に出向いて個別に(老健法基本健診も含め)健診をおこなうなど様々な方法を取り入れる必要がある。
(2)公共・公的機関の健診を充実する
  零細企業の労働者は、現実に市町村の住民検診を個別に受けている場合が多いが、労働衛生管理には機能としては不十分で、また、結果が職場における健康管理に反映されていない。例えば、老健法基本健診に聴力検査などの項目を加えて労働安全衛生規則に合致させ、健診結果を集約して、職場の一般健診として活用するなど、組織だって行う必要がある。
  また、すでに政府管掌健保の成人病健康診査などが実施されているが、検査項目や事後措置の指導などの充実、継続性確保、費用負担など改善すべき点がある。また、医師会の健診事業を一層推進することも必要である。
  担当産業医が、上記の個別健診の実施と活用など一般健康管理と職場における労働衛生管理とを合わせて担うようにする。
  今後の検討課題として、職域保健と地域保健との整合性を考える必要がある。
(3)健診の実施において、財政的な補助を組み入れる
  法令通りの項目を実施した場合の一人当たり費用は少なくとも6000円を超し、零細な事業所においては小さくない負担となる。何らかの補助により健診実施を容易にする。

2-4. 事後措置
(1)受診者個人への結果報告を速やか、かつ確実に行い、それに基づく健康指導を行う
  1996年の労働安全衛生法改正により一般健康診断結果の受診者個人への結果通知が義務化されたが、通知していない場合があり、もれなく通知する必要がある。このことが個々の労働者の健康への関心を高めることにもなる。
(2)受診指導・保健指導の充実
  これらの指導を、事業者や労働者個人にまかせてしまうのでは不十分である。保健所・市町村保健センターの保健婦や、地域産業保健センターに配置された産業保健婦、担当産業医などにより確実に実施されよう充実されるべきである。
(3)仕事への配慮を「担当産業医」が助言する
  中高年者が多い小規模事業所においては、何らかの疾病を有して仕事をする人の割合が高い。そのため、仕事への配慮は重要であり、実施には「担当産業医」などの充実が必要である。

2-5. 健康相談
  T情報提供の2.相談体制の強化で述べたように、相談機関へのアクセスの周知が重要である。また、休みが取りにくい小規模事業所には夜間・休日の対応について考慮が必要である。

2-6. 健康づくり
  小規模事業所における健康づくりを地域保健の一環として位置づけ、地域における健康づくりに関するハードやソフトの資産を小規模事業所における健康づくりに生かすことが現実的である。保健所・市町村保健センター、市町村立の体育館、民間の健康増進施設などの活用、小中学校設備の開放などが考えられる。その際、休日・夜間の対応も考慮する必要がある。

2-7. メンタルヘルス
  小規模事業所単独ではメンタルヘルスに対応することは困難である。地域産業保健センターで対応できるよう機能を充実する必要がある。また、保健所および精神保健福祉センターとの密な連携も必要である。