<小規模事業所における総合的健康管理等の方策に関する提言>
[.行政による支援を進める


  自主対応型の活動が強調される今後においても、小規模事業所における労働衛生管理については行政の役割は決して小さくはないであろう。行政が取り組む方法が従来と変わるべき分野、行政のサポートが積極的に拡大されるべき分野、行政が新たに取り組むべき課題などが検討されることにより、小規模事業所における労働衛生管理を推進する必要がある。


1.助言を主とした労働安全衛生に関わる指導をおこなう
1-1.
小規模事業所における労働安全衛生活動の改善への助言を主にした指導を中心にする
 情報の提供、相談・専門機関の紹介、各種助成の紹介と斡旋、自主的な活動グループの紹介などにより、自主的な活動を支援する。

1-2.
行政による有害物取扱事業所への指導の充実
(1)法的規制などに関するパンフレットを有害物取扱い事業所に送付するとともに、労働基準監督官による立ち入り・指導を強化する。
(2)特殊健診・作業環境測定を実施していない事業所に対し、労働基準局が、地域ごとに特殊健診機関や作業環境測定機関を割り振り、集団的・効率的に特殊健診・作業環境測定を実施させる。

2.労働安全衛生に地方自治体も関与する

  地域密着型の小規模事業所にとって、地方自治体は最も身近な存在であり、T.情報提供、V.ネットワーク、Z.一般健康管理の項で述べたような関与が小規模事業所における労働安全衛生管理の推進に不可欠である。

3.労働安全衛生管理活動に関わる財政的なサポートをおこなう

3-1.
教育、健康診断、労働衛生機関の充実、労働安全衛生巡視などへの財政的な補助
  小規模事業所は経営基盤が脆弱なため独自の安全衛生活動をおこなうのは困難である。直接的・間接的な行政による財政的な支援が不可欠である。

3-2.
融資・助成の対象の拡大、その手続きの簡素化、作業環境などの改善の場合には有効性評価の実施
  現在ある各種の助成・融資は有効であるが、対象が狭く、集団の形成など条件が付き、また、事務手続きが煩雑なために躊躇する事業所が少なくない。対象の拡大や簡素化により、融資・助成を受けやすくする必要がある。また、有効性の評価をおこなうこよにより、経費の無駄を防ぐばかりではなく、その経験を他へ及ぼす効果が期待できる。

4.安全衛生管理体制の整備、MSDSの法制化、リスク評価の制度化などの法制度の整備

  W.労働衛生管理体制の強化、Y.有害負担作業などで述べた、MSDS、リスク評価などを整備して法的根拠を与えることにより、一層の推進が可能となる。

5.メリットシステムにより制度の浸透を図る

  小規模事業所に現状の労働安全衛生法制度の遵守を期待するには、啓発のみならず、遵守することで経済的なメリットを得られるようにすることが必要である。また、甚だしく悪質な事例に対するペナルティも必要になろう。
5-1.
労災保険料から労働衛生管理活動に要した費用を減額するなどメリット制を拡大する
  表記のようなメリット制により、小規模事業所における労働衛生管理活動への費用負担が軽減され、より実行しやすくなる。

5-2.
対策が進んでいる場合にはメリットを提供する
 環境改善が進み、作業環境測定結果が規制値よりも十分低い状態(第1管理区分の中でも十分低い状態)が何年か連続した場合には、特殊健康診断・作業環境測定の実施頻度を減らす(たとえば1年に1回)などのメリットにより、改善への意欲を刺激する。