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大阪府感染症情報センター

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蚊やダニなどの節足動物によって媒介される感染症について

更新日:2024年5月2日

はじめに


蚊やダニなど吸血性の節足動物がウイルス、リケッチア、原虫などの病原体を媒介して起こる感染症には非常に多くの種類があります。世界的には蚊が媒介するマラリアやデング熱などの流行が大きな問題となっています。日本では、蚊が媒介する日本脳炎やダニが媒介するつつが虫病や日本紅斑熱が代表的です。ここでは最近話題になった感染症や注意すべき感染症について情報を提供します。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について

平成24年(2012年)の秋に、これまで我が国では知られていなかった新しいウイルス感染症が山口県で報告されました。これは重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome、SFTS)という疾患で、発病すると高熱、嘔吐、下痢などの症状が現れ、血小板や白血球が減少し、重症化すると死亡することがあります。

国内では、4類感染症として全数把握対象疾患に定められた2013年から2024年1月31日現在までに、939名(死亡104名)のSFTS患者が報告されています。患者は30の都府県から報告されており、特に九州、中国、四国、近畿からの届け出が多くなっています。

SFTS2009年頃から中国での流行が報告され、2011年にSFTSの病原体がブニヤウイルス科に属するウイルスであることが明らかにされました。SFTSウイルスはマダニと呼ばれる比較的大型のダニ(成ダニの大きさはおよそ3mm以上あり、肉眼で見える)によって媒介されると考えられていますが、ネコやイヌにも感染し、感染した伴侶動物(ペットなど)からヒトへの感染も報告されています。また、2024年には国内で初めてヒト-ヒト感染例も報告されています。

国内でのマダニのウイルス保有調査によると、これまで患者報告のない山梨、長野、岐阜、栃木、群馬、岩手、宮城、北海道の各道県でもSFTSウイルスを保有するマダニが検出されています。マダニの種類は、タカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニなどですが、これらは我が国の山林や草地にも普通に分布する種類のマダニです。また、動物を対象としたウイルスに対する抗体調査から、福岡、熊本、宮崎、鹿児島、島根、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、兵庫、京都、滋賀、和歌山、三重、岐阜、富山、長野、静岡、宮城の各府県でもSFTSウイルスの存在を示唆するデータが得られています。これら調査結果から考えると、SFTSウイルスは全国的に広く存在しているものと思われます。大阪府では2023年までに3例(2017年1例、2018年1例、2022年1例)のSFTS患者の報告があり、2022年にはじめて大阪府内での感染が疑われた例も報告されました。

我が国にはマダニが媒介する感染症として、SFTSのほか、日本紅斑熱やライム病、ダニ媒介脳炎などがあり、日本紅斑熱は2020年以降、毎年全国で400名を超える患者が発生し、近年増加しています。

これらの感染症を防ぐためには、マダニに咬まれないようにする必要があります。特に、マダニが活発に活動する春から秋にかけて山林や草地へ立ち入る際には、できるだけ皮膚の露出を避け、長袖・長ズボン、絞り口付き長靴等を着用するようにします。レインウェアのようななめらかな生地にはマダニがつきにくく、白っぽい服装のほうがとりついたマダニを発見しやすくなります。帰宅後は必ず入浴し、マダニが体表についていないかをよく点検します。もしマダニがついていた場合は医療機関(皮膚科など)で取ってもらうと良いでしょう。また、ハイキング等の野外活動や山林や草地に立ち入って1~2週間してから体調が悪い時や発熱などの症状が出た場合は、念のため医療機関を受診しましょう。

デング熱について

デング熱はデングウイルスを持った蚊に刺されて発症する感染症です。蚊に刺されて2日~2週間ほどしてから急な発熱とともに頭痛、目の奥の痛み、関節痛、発疹などの症状が現れます。熱帯・亜熱帯地域では各地で流行が続いており、WHOの推計では毎年14億人が感染していると見積もられています。東南アジアなどの流行地域を訪れて感染する日本人も増加傾向にあり、大阪府でも毎年このような輸入感染症例が発生しています。

デング熱を媒介する蚊は、海外では主にネッタイシマカとヒトスジシマカですが、我が国ではヒトスジシマカに刺されて感染します。この蚊は私たちの身の回りにごく普通に生息しており、生息域も地球温暖化とともに拡大し、北海道以外の全国で生息が確認されています。

大阪府では、2003年より夏期に府内の市街地において蚊の捕集調査を実施し、蚊がデングウイルス、ウエストナイルウイルス、日本脳炎ウイルス等を保有していないかどうか監視しています。2023年も6月下旬から10月中旬にかけて府内12カ所の定点で捕集調査を実施していますが、現在までのところ、これらのウイルスは検出されていません。

2014年には東京都の代々木公園や新宿中央公園の訪問者を中心として、海外渡航歴がなく国内で感染したと思われるデング熱の患者が多数報告される事例がありました。大阪府内でもこのような事例は起こりうるため、注意が必要であると考えています。

(2024年5月2日記)

リンク先

大阪府

厚生労働省

国立感染症研究所

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