RSウイルス感染症流行期入りの目安
RSV感染症は、地域による流行時期の違いが認められているため、地域ごとの流行開始時期の系統的な閾値設定が期待されています[1]。大阪府感染症情報センターでは、大阪府におけるRSV感染症の流行開始期の基準値について検討しました。ここでは、基準値の設定方法について説明します。
はじめに、流行期を定義します。流行期は、実効再生産数*の95%信頼区間の下限値が1を超えた時から、定点当たり報告数がその時の報告数を下回るまでの期間としました。(RSV感染症の報告者数は通常、実効再生産数が1を超えてから感染者数が増加し、最盛期を迎え、減少に転じます。)
次に、流行期判定のための閾値(定点当たり報告者数)を設定し、この閾値が流行期を見逃さず判定できるか(感度)、誤って判定しないか(特異度)を観察します。(閾値以上であれば流行期、閾値未満であれば非流行期と判定することとします。)この閾値による判定が、定義された流行期と最も良く一致する(感度と特異度の和が最大となる)定点当たり報告数「0.4」を流行開始期の基準値としました。
実効再生産数は、感染(拡大・縮小)状況の経時的評価に用いられており、新型コロナウイルス感染症においても世界的に広く用いられています。この値が1を超えると感染拡大期、下回ると感染縮小期と解釈されます。RSV感染症においても、実効再生産数を用いた感染拡大期の評価が可能であると考えられます。
参考文献