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大阪府感染症情報センター

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サル痘の多国間への感染の急速な拡がりについて

更新日:2022年7月29日

以下の記事はWHOの配信しているsituation report1)の内容を参考にしています

世界保健機関(WHO)は、複数の国々で発生しているサル痘について議論するため、2022年7月21日に2回目の国際保健規則緊急委員会を開催しました(第1回目は2022年6月23日)。7月23日にWHO事務局長は、緊急委員会の見解等を踏まえ、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern: PHEIC)」に該当する旨を宣言しました(WHO)。

WHO事務局長は以下の点を踏まえて宣言をしています

  • サル痘ウイルスがこれまで、これだけ多くの国々へ急速に拡大したことがないこと。
  • PHEICを宣言するための3つの要件、1,異常な事態であるか、2,国際的な拡がりをみせ、他国の公衆衛生上のリスクを与えるか、3,国際的に調整した対応が必要となるか、を満たしていること。
  • 緊急委員会では、今回の宣言への反対意見があり、総意は得られていないこと
  • 科学的な知見が現時点で不足していること。
  • 人の健康へのリスク、国際的な拡がり、また国際輸送への干渉が発生する恐れがあること。

発生状況

2022年1月1日以降、7月22日までに16,016例の症例が世界の75の国と地域から報告され、WHOの6つある地域すべてから報告されています(図1、図2)。過去4週間に報告された11,104例のうち8,004例(72%)はヨーロッパ地域で、2,841例(26%)はアメリカ地域から報告されています。報告数の多い上位10か国はスペインが3,125例、続いて米国の2,316例、ドイツ2,268例、英国2,137例、フランス1,453例、オランダ712例、カナダ615例、ブラジル592例、ポルトガル588例、イタリアの374例で、これらの国々で全報告数の89%を占めています。西部、中央アフリカでは以前からサル痘症例が持続的に報告されていますが、それ以外の国々で地域流行したことはこれまでには一度もありませんでした。

日本国内では7月28日現在、ヨーロッパ地域または北中米地域に渡航歴のある症例が2例報告されています。
厚生労働省7月25日、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27036.html、
厚生労働省7月28https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27118.html

16,016例のうち死亡例は5例、いずれもWHOアフリカ地域から報告されています。

性別が確認されている11,740例のうち11,613例(99%)は男性です。年齢の確認されている症例の年齢中央値は36歳(四分位範囲31-43)で、18-44歳が症例の77%を占め、18歳未満の症例は1%未満(81/11,787)です。

性的指向の情報が確認されている症例のうち98%(5,470/5,561)は、ゲイ、バイセクシャル、またはその他男性間での性的接触のあるもの(MSM)でした。

HIVの感染状況の情報が確認された症例のうち41%(1,873/4,614)がHIV陽性となっています。

これまでに、319例の医療従事者の症例が報告されていますが、そのほとんどが職業曝露以外での感染が確認されており、職業曝露による感染の可能性について、さらなる調査が進められているところです。

Fig.1monkeypox0729.png
図1)2022年1月1日以降から7月22日までに報告されたサル痘症例の地域別週別流行曲線

Fig.2monkeypox0729.png
図2)2022年1月1日以降から7月22日までに報告されたサル痘症例を報告している国の地理分布

感染拡大防止に向けて

人々が長期間、頻繁に密接に接触する集会はサル痘の感染リスクを助長する可能性があるため、集会参加者や主催者へ向けた感染拡大防止の注意喚起や啓発活動を積極的に実施することが重要です。

症状が出たら

症状が報告されている9,099例のうち最も多く報告されている症状は発疹で、体のいずれかの部位に発疹が確認された症例は90%(8,216例)、全身性の発疹を呈した症例は71%でした。また、発熱が49%の患者から報告されています。

サル痘が多く報告されている国に滞在し、上記を含むサル痘が疑われる症状を認めた場合には、まず、最寄りの医療機関に相談することが大切です。

参考情報

  1. WHO,Multi-country outbreak of monkeypox, External situation report #2 - 25 July 2022