サル痘(mpox)の多国間への感染の拡がりについて
更新日:2023年3月24日
以下の記事はWHOの配信しているsituation report1)の内容、および厚生労働省の資料を参考にしています。
世界における発生状況
2022年1月1日以降、2023年3月13日までに86,496例の症例が世界の110の国と地域から報告され、WHOの6つある地域すべてから報告されています(図1)。累積の死亡は111例となっています(表1)。疫学週第10週(3月6日から3月12日)における新規の症例発生数は132例で、前週と比較すると22例減少しています。3月13日までの直近3週間に報告された症例の92%はアメリカ地域(Region of the Americas)からでしたが、西太平洋地域(Western Pacific Region)では報告数の増加(他の地域では減少傾向であったのに対し)が認められています(表1)。累計症例数の上位10か国は米国(30,039)、ブラジル(10,878)、スペイン(7,543)、フランス(4,128)、コロンビア(4,085)、メキシコ(3,928)、ペルー(3,774)英国(3,738)、ドイツ(3,692)、カナダ(1,460)でこれらの国で世界の症例数の84.7%を占めています(図2)。
・性別が確認されている82,194例のうち79,275例(96.4%)は男性です
・年齢中央値は34歳(四分位範囲29-41)です
・年齢が判明している87,916例のうち1.1%(951/87,916)は0~17歳、0.3%(268/87,916)は0~4歳児であり、0~17歳例の74%(703/951)がアメリカ地域からの報告です
・性的指向の情報が確認されている症例のうち82.1%(28,480/34,690)は、ゲイ、バイセクシャル、またはその他男性間での性的接触のあるもの(MSM)でした
・感染経路が判明している症例のうち68.9%(15,353/22,293)が皮膚や粘膜を介した接触感染でした
・一つ以上の症状が判明している38,703例のうち、発疹が83.3%と最も多く、発熱が59.5%、全身性および性器の発疹がそれぞれ54.2%、47.1%でした
・これまでに、111例の死亡例が報告されており、そのうち詳細が判明している32例のうち78%(25/32)がHIV陽性でした。また、72%(23/32)が免疫不全でした
図1)2022年1月1日以降から2023年3月12日までに報告されたサル痘(mpox)症例の地域別週別流行曲線
図2)2022年1月1日以降から2023年3月13日までに報告されたサル痘(mpox)症例を報告している国の地理分布
表1)地域別のサル痘(mpox)症例累積報告数、死亡数、直近3週間の状況(2023年3月13日時点)
国内における発生状況
日本国内では2023年3月24日現在、63例報告されており、全て男性の症例です。
厚生労働省 報道発表資料を基に以下図表(図3,表2-4)を作成
図3)国内における受診週別の症例発生状況(2023年3月24日現在 n=63)
表2)報告症例における症状の有無および症状別割合
主な症状 | 報告数 | 報告割合(%) |
発疹 |
54 |
85.7 |
発熱 | 42 |
66.7 |
倦怠感 | 18 |
28.6 |
リンパ節腫脹 | 22 |
34.9 |
頭痛 | 14 | 22.2 |
咽頭痛 | 7 |
11.1 |
筋肉痛 | 7 | 11.1 |
無症状 | 4 | 6.3 |
表3)報告症例における年代割合
年代 | 報告数 | 報告割合(%) |
20歳代 | 12 |
19.0 |
30歳代 | 22 |
34.9 |
40歳代 | 25 |
39.7 |
50歳代 | 3 |
4.8 |
60歳代 | 1 | 1.6 |
表4)報告症例における居住自治体割合
居住地 | 報告数 | 報告割合(%) |
東京都 | 42 |
66.7 |
神奈川県 | 6 |
9.5 |
千葉県 | 3 | 4.8 |
埼玉県 | 4 |
6.3 |
茨城県 | 1 | 1.6 |
大阪府 | 4 | 6.3 |
徳島県 | 1 | 1.6 |
国外 | 2 | 3.2 |
感染拡大防止に向けて
サル痘(mpox)は、(i)主に感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液に触れた場合(性的接触を含む)、(ii)患者と近くで対面し、長時間の飛沫にさらされた場合、(iii)患者が使用した寝具等に触れた場合等により感染します。人々が長期間、頻繁に密接に接触する集会は、サル痘(mpox)の感染リスクを助長する可能性があるため、集会参加者や主催者へ向けた感染拡大防止の注意喚起や啓発活動を積極的に実施することが重要です。
症状が出たら
最も多く報告されている症状は発疹で、体のいずれかの部位に発疹が確認された症例は80%以上となっています。また、発熱が60%以上の患者から報告されています。
サル痘の潜伏期間は6から13日間(最大5から21日間)とされており、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛等の症状が0から5日続き、発熱1から3日後に発疹が出現、発症後2から4週間で治癒するとされています。
上記を含むサル痘(mpox)が疑われる症状を認めた場合には、まず、最寄りの医療機関に相談することが大切です。医療機関を受診する際には、マスクの着用や発疹部位をガーゼなどで覆う等の対策をした上で受診してください。