ハンタウイルス感染症について
更新日:2026年5月15日
ハンタウイルス感染症とは
ハンタウイルスとは、ハンタウイルス科オルソハンタウイルス属に属するウイルスの総称で、ハンタウイルス感染症は、このハンタウイルスによって引き起こされる感染症です。ハンタウイルスには50種類以上のウイルスが知られています。ハンタウイルスは主にげっ歯類(ネズミ等)を自然宿主としており、ハンタウイルス毎に宿主となるネズミの種類も異なります。ヒトは、感染したげっ歯類の尿、糞便、唾液に接触したり、それらに汚染された粉塵を吸入したりすることで感染します。
ハンタウイルス感染症は、主に「腎症候性出血熱(haemorrhagic fever with renal syndrome ; HFRS)」と「ハンタウイルス肺症候群(hantavirus cardiopulmonary syndrome ; HCPS/hantavirus pulmonary syndrome: HPS)」の2つの病型に大別され、地域によって主に見られる病型が異なります。一般に、腎症候性出血熱はアジアおよびヨーロッパで、ハンタウイルス肺症候群は主に北米および中南米で報告されています。
なお、アンデスウイルス等のハンタウイルス肺症候群を引き起こすウイルスを媒介するげっ歯類(表参照)は、日本国内ではこれまで確認されていません。
表.主要なハンタウイルス
腎症候性出血熱について
感染経路
腎症候性出血熱の原因となるハンタウイルスを保有するげっ歯類の尿、糞便、唾液との接触、またはそれらに汚染された粉塵の吸入によって感染します。腎症候性出血熱を媒介する自然宿主げっ歯類であるドブネズミは日本国内で確認されており、それによる患者発生の報告はでていませんが注意する必要があります。
症状
潜伏期間は1週間から5週間程度(通常2週間から3週間)とされています。軽症では上気道炎症状や発熱などの症状がみられ、重症化するとショックや腎不全を起こし、時に死亡する場合があります。致命率はウイルスの種類により異なりますが、一般に数%から十数%程度とされています。
治療
現時点では特異的な治療法は確立されておらず、対症療法が中心となります。なお、重症化した場合には集中治療が必要です。
ハンタウイルス肺症候群について
感染経路
主にハンタウイルス肺症候群の原因となるハンタウイルスを保有するげっ歯類の尿、糞便、唾液との接触、またはそれらに汚染された粉塵の吸入によって感染します。ただし、まれな報告として、南米で確認されているアンデスウイルスにおいては、ヒト-ヒト感染事例があります。なお、アンデスウイルス等、ハンタウイルス肺症候群を媒介する主な自然宿主げっ歯類は、日本国内ではこれまで確認されていません。
症状
潜伏期間は一般に1週間から5週間程度(通常約2週間)とされています。発熱や咳、筋肉痛などの症状がみられ、嘔吐や下痢を伴うこともあります。急速に症状が進行し、呼吸不全を呈し死亡することがあります。致命率は約40%から50%とされています。
治療
現時点では特異的な治療法は確立されておらず、対症療法が中心となります。なお、重症化した場合には集中治療が必要です。
世界の発生状況
腎症候性出血熱はアジアおよびヨーロッパを中心に流行しており、中国では近年、年間平均約12,800例、ロシアでは約7,300例、欧州連合では約3,100例、韓国では約300~600例の報告があります。
一方、ハンタウイルス肺症候群は主に北米および中南米で報告されており、アルゼンチン、ブラジル、チリなどを中心に、年間約300例の報告があります。
図.異なる地域および国におけるハンタウイルス報告症例の年間平均数(2000年~2020年)
赤丸:腎症候性出血熱(HFRS)、青丸:ハンタウイルス肺症候群(HCPS/HPS)
出典:Vial Pら. Hantavirus in humans: a review of clinical aspects and management. The LancetInfectious Diseases
国内の発生状況
腎症候性出血熱については、日本国内では1970年代から1980年代に実験用ラットから感染した事例の報告はあるものの、感染症法の施行された1999年以降、国内での感染事例は報告されていません。
ハンタウイルス肺症候群については、これまで国内での感染事例は報告されていません。
なお、腎症候性出血熱およびハンタウイルス肺症候群は、感染症法に基づく4類感染症(全数把握対象疾患)に指定されており、医師が診断した場合には、直ちに保健所へ届け出る必要があります。
予防と対策
ハンタウイルス感染症の予防には、感染源となるげっ歯類との接触を避けることが重要です。特に流行地域では、げっ歯類の排泄物や唾液への接触や、これらに汚染された粉塵を吸入しないよう注意し、屋内外の環境を清潔に保つことが求められます。
また、食品は密閉容器に保管するなど、げっ歯類が接触できないよう適切に管理することが重要です。
なお、国内で承認されたワクチンは、現時点ではありません。
関連情報
ハンタウイルス感染症についてについて詳しくお知りになりたい方は、下記ホームページ、文献をご参照ください。厚生労働省検疫所「ハンタウイルス感染症(腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群)」
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/name35.html
厚生労働省「腎症候性出血熱」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hantavirushfrs.html
厚生労働省「ハンタウイルス肺症候群」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hantavirushps.html
国立健康危機管理研究機構「ハンタウイルス肺症候群」
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/hantavirus-pulmonary-syndrome/index.html
国立健康危機管理研究機構「ハンタウイルス肺症候群(詳細版)」
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/hantavirus-pulmonary-syndrome/detail/index.html
国立健康危機管理研究機構「国外航行中のクルーズ船におけるハンタウイルス感染症事例について」
https://id-info.jihs.go.jp/risk-assessment/hantavirus-pulmonary-syndrome/20260506/index.html
Vial P, Ferrés M, Vial C et al. Hantavirus in humans: a review of clinical aspects and management. The Lancet Infectious Diseases, 2023; 23, e371-e382. doi: 10.1016/S1473-3099(23)00128-7
