マイコプラズマ肺炎
更新日:2024年11月7日
マイコプラズマ肺炎は肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae: M. pneumoniae)によって引き起こされる肺炎です。感染症法に基づく感染症発生動向調査において5類感染症(定点把握)に位置付けられており基幹定点医療機関から毎週患者数が報告されています(届出基準)。
基幹定点医療機関は通常、300人以上収容する施設を有する病院であって内科及び外科を標榜する病院(小児科医療と内科医療を提供しているもの)が 2次医療圏域毎に1カ所以上指定されています。
大阪府内の状況
2024年第44週は大阪府内の18の基幹定点医療機関から59例のマイコプラズマ肺炎の報告があり、定点あたり報告数は3.28でした(図1 )。2024年第31週は定点あたり報告数は3.89で、現行の集計方法になってから最も高い定点あたり報告数になっています。
図1大阪府内のマイコプラズマ肺炎週別定点あたり報告数推移
2023年まで基幹定点医療機関からの1週間の定点あたり報告数が最も多かったのは2011年第48週の3.87で、次いで2006年第32週の3.70 でした。2023年までに定点あたり報告数が3を超えた週は7回のみとなっています(2006年第30週、32週、2011年第35週、43週、48週、50週、2016年第42週)(図1)。
過去の推移をみると、年の後半に増加する傾向があることから、今後の推移に注意が必要です。
図2大阪府内のマイコプラズマ肺炎年間報告数推移
大阪府では1999年4月 以降、基幹定点医療機関からの年間報告数が最も多かったのは2011年の1,464例、次いで 2016年の1,101例、2006年の1,068例となっています。2024年は第43週時点で1,137例と、2016年の年間報告数を超えました (図2)。
図3大阪府内のマイコプラズマ肺炎年齢階級別報告数割合推移
1999年から2023年の 累計報告数に占める年齢階級別の割合は、5~9歳で最も高く36%を占めています。続いて1~4歳の31%、10~14歳の16%となっています(図3)。
2024年は5~9歳、1~4歳、10~14歳の年齢区分の報告数に占める割合がそれぞれ40%、18%、および28%となっています。2023年以前の平均に比較し5~9歳、10~14歳の割合が高く、一方で、1~4歳は低くなっています。
マイコプラズマ肺炎の特徴と予防
感染経路は主に飛沫感染と接触感染で、潜伏期間は感染後2~3週間程度です。症状は発熱, 全身倦怠感, 頭痛, 咳などで, 解熱後も咳が長く続くことがあります。肺炎に至らない気管支炎症例も多いですが、一方で、 重症化して入院治療が必要な症例もあります。現時点で有効なワクチンはありません。
参考情報)マイコプラズマ肺炎2023年現在(IASR Vol. 45 p1-2: 2024年1月号)
耐性菌:マイコプラズマ肺炎の治療にはマクロライド系抗菌薬, ニューキノロン系抗菌薬, テトラサイクリン系抗菌薬などが有効です。ただ、 ニューキノロン系抗菌薬とテトラサイクリン系抗菌薬の小児への投与は慎重に行う必要があるため, マクロライド系抗菌薬が第一選択薬となります。1990年代まではマクロライド耐性のM. pneumoniaeが臨床から分離されることは稀でしたが、 2000年以降, 国内および東アジア地域でマクロライド耐性菌が頻繁に分離されるようになりました。国内では小児の重症のマクロライド耐性マイコプラズマ肺炎が短期間に単一医療機関で集積した事例もあり, 重症度の高いマクロライド耐性M. pneumoniae感染症の発生が懸念されています。
参考情報)小児感染症診療ネットワークで探知したマクロライド耐性マイコプラズマ重症肺炎の症例集積(IASR Vol. 45 p69-70: 2024年4月号)
予防
- 手洗い:こまめに石鹸と水で手を洗うことで、感染拡大を防ぐことができます。特に、外出先から帰った後や咳やくしゃみをした後には手洗いを徹底しましょう。
- 咳エチケット:咳やくしゃみをするときには、ティッシュや肘の内側で口と鼻を覆いましょう。使用したティッシュはすぐに廃棄し、手を洗うことが重要です。
- マスクの着用:感染が拡がっている地域や密集した場所に行く際には、マスクを着用することで飛沫感染を防ぐことができます。