梅毒(妊娠例と先天梅毒の報告状況)
更新日:2025年1月28日
大阪府内で報告された梅毒届出症例における妊娠例と先天梅毒の報告状況
(2017年~2024年)
2025年1月17日時点のデータに基づく
今回の報告における用語の定義を以下に記載する
- 先天梅毒例:2017年~2024年に報告された梅毒症例のうち、病型が先天梅毒と記載されている29症例、および病型が無症状病原体保有者と記載されている診断時の年月齢が0歳0か月であった1症例を対象とした
- 妊娠例:届出様式に妊娠の有無の記載が追加された(健感発1018第2号,平成30年10月18日)2019年1月1日以降に報告された梅毒症例のうち、妊娠の記載のある症例を対象とした
大阪府内の梅毒症例の年間届出数は2018年に1,188例を記録し、それ以降2021年まで届出数は減少傾向で推移していたが、2022年に急増し、2023年、2024年とおよそ2,000例で推移している(図1)。
妊娠例は2019年31例、2020年37例、2021年および2022年が41例と増加傾向で推移していたが、2023年は63例とさらに増加し、2024年も57例と同程度の報告があった(図2)。2024年は妊娠例のうち無症候で届出られたのは77%、早期顕症梅毒(1期)9%、早期顕症梅毒(2期)14%となっている(図3)。
届出時に届出項目の(性風俗産業の従事歴(直近6か月以内)に「あり」と記載のあった症例は2019年から2021年までそれぞれ1例(3%)、4例(11%)、10例(24%)と数および割合が増加し、2022年は4例(10%)と2021年に比較し減少したが2023年以降再び増加し2024年は20例(35%)であった(表)。しかし、2022年の妊娠例のうち性風俗産業従事歴に関する記載がないものが41%と高いことから、正確な状況を把握することは困難である。
2017年から2024年までのいずれの年も先天梅毒例が報告されており、その数は、2023年までは年間1例から5例で推移していたが、2024年は現在の集計方式になって過去最多の9例と増加している(図2)。先天梅毒は出産後に時間が経過してから判明する場合もあることから、今後の推移に注意が必要である。
2021年後半から大阪府を含め全国的に梅毒症例の報告数が急増していること、また、妊娠例における性風俗産業従事歴ある妊娠例も報告されていることから、以下のことが重要であると考えられた。
- 妊娠の可能性のある者のうち感染リスクがある者への検査実施と啓発
- 妊娠中、または、妊娠の可能性のある者のパートナーに対する検査実施と啓発
- 性風俗産業に従事している者、または、性風俗産業に従事歴のある者への検査実施と啓発
- 梅毒に対し有効な対策を講ずるうえで、精度の高い疫学情報が不可欠であり、届出時の不明記載の割合を少しでも減らすこと
図1_大阪府内における梅毒症例届出状況
図2_大阪府内における妊娠例、先天梅毒例(棒グラフ)および性別毎の梅毒症例届出状況(折れ線グラフ)
(2017年および2018年の妊娠例数は届出備考欄に妊娠の記載、または、出産時に判明の記載のあるものを参考として記載している)
図3_大阪府内における妊娠例の病型別割合
2019年1月1日より、梅毒の届け出様式の変更に伴い、性風俗産業従事歴について記載されるようになった